2005 Fiscal Year Annual Research Report
いもち病菌染色体における非病原性遺伝子アイランドの同定とその転移・分解機構の解析
Project/Area Number |
16380036
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
土佐 幸雄 神戸大学, 自然科学研究科, 助教授 (20172158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞山 滋志 神戸大学, 農学部, 教授 (00112251)
中屋敷 均 神戸大学, 農学部, 助教授 (50252804)
朴 杓允 神戸大学, 自然科学研究科, 教授 (20147094)
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Keywords | Magnaporthe / Pyricularia / 非病原力遺伝子 |
Research Abstract |
我々は、いもち病菌が抵抗性遺伝子による認識をすばやく回避するために、マラリア病原体と同様にテロメアの可塑性を利用する戦略をとっているのではないかと考えた。そこで、AVR1-Pita(イネ品種ヤシロモチの持つ抵抗性遺伝子Pitaに対応するイネ菌の非病原力遺伝子)をモデルとして取り上げ、この仮説を検討した。本遺伝子は、クローニングされた菌系統においてはテロメアに存在することが知られている。ところが、さまざまないもち病菌における本遺伝子の座乗染色体を調べた結果、イネ菌のなかにもテロメアではないところに本遺伝子を持っているものが見つかった。また、その座乗染色体はさまざまで、生存に必須でないミニクロモソームに座乗する菌株も存在した。イネ菌株のAVR-Pita周辺の構造を調べたところ、レトロトランスポゾンのLTRと思われる小断片が列をなして存在した。そこで、イネ菌以外の菌株におけるAVR-Pitaとその周辺領域をクローニングしたところ、イネ菌のオリジンに近いと考えられているエノコログサ菌、キビ菌において片側にそのレトロトランスポゾンの本体が現れ、さらにイネ菌・エノコログサ菌・キビ菌のオリジンに近いと考えられるメヒシバ菌においては、両側にレトロトランスポゾン本体が現れた。一方、上記の菌からかなり早い段階で分化したと思われるCenchrus菌においては、AVR-Pita周辺に当該レトロトランスポゾン本体のみならず、LTRの断片さえも存在しなかった。一方、各菌株のAVR-Pita配列の系統樹を作成したところ、それらの分化の順序が明らかとなった。それらを総合的に考察した結果、筆者は、いもち病菌の祖先型では、AVR-Pitaは染色体内部で静止していたが、あるとき偶然にレトロトランスポゾンがその両側に挿入されることによって「放浪癖」を獲得し、異所的組み換えによって染色体上を彷徨したのち、テロメアにたどり着いたと結論した。
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