2006 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫生理活性物質の代謝を担うチトクロムP450の同定とその発現調節機構の解明
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16380045
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
冨田 隆史 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (20180169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛西 真治 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 主任研究官 (80332360)
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Keywords | シトクロムP450 / ネッタイイエカ / 殺虫剤抵抗性 / マイクロアレイ / 遺伝子増幅 / 遺伝子過剰発現 |
Research Abstract |
ネッタイイエカの殺虫剤抵抗性JPP系統の蚊では,感受性系統に比べて,約6倍の遺伝子量をもつ1つのシトクロムP450分子種の遺伝子(P450#32)が幼虫期に約300倍のmRNAレベルを示す。この遺伝子に過剰発現をもたらす分子機構を解明するために,増幅単位の構造を解析した。2つの増幅単位が縦列する場合,それらの配置には継ぎ目を挟んで4通りの配置が考えられるので,それぞれの配置の有無を検出する目的で,P450#32特異的プライマーを用いてlong PCRを行い,1.7kbのP450#32コード領域の上流と下流にそれぞれ約3kbと8kbの増幅産物を得てクローニングと塩基配列決定を行った。上流域にはP450#32と同族だが互いに異なる2っのP450遺伝子様配列(P450XとP450Ψ)が逆向きに挿入されていた。その中の近位にあたるP450Ψ配列は遺伝子頭部のみを含む剪断された配列であった。下流域で配列決定を行った2kbの断片には既知遺伝子の相同配列は見出せなかった。これらJPP系統由来のP450#32を中央に含む併せて約8kbの一連のコンティグ配列を現在進行中のネッタイイエカ・ゲノムプロジェクトの公開ドラフト配列と比較したところ,JHB系統由来のBAC supercontig#24854中の一領域と高い一致性(>95%)を示し,隣接する増幅単位の継ぎ目があれば含まれているはずの正/逆向きの繰り返し配列にあたる区分は存在しなかった。以上の結果から,JPP系統のP450#32遺伝子を含む増幅単位は今回解析した8kbより大きいと推定した。JHB系統蚊のゲノムでは,完全長のP450X配列を始めとして,同族だが互いに異なるさらに2つのP450遺伝子様配列(P450YとP450Z)が約0.3kbおきに,P450#32に対し近位から遠位に向けて全て逆向きに配置していた。従って,P450#32遺伝子の基本転写調節領域が同遺伝子の上流にあるとするなら,その領域は約3kbのP450#32とP450Xの構造遺伝子問介在配列に存在する可能性も示される。
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