2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本産ナラ類4種の遺伝資源の保全管理をめざした分子集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
16380104
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
原田 光 愛媛大学, 農学部, 教授 (40150396)
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Keywords | ミズナラ / メチオニンシンターゼ / 環境適応 / 自然選択 / 氷河期 / 遺伝的変異 / 集団遺伝学 / 温暖化 |
Research Abstract |
日本の冷温帯を代表する樹木であるミズナラ(Quercus mongolica var. crispula)は、日本の北東部全域と南西日本では標高800〜900m以上の山地部に生育する。これまでの葉緑体DNAの変異を用いた研究で、これらは氷河期の時にサハリンを経由して北方から移入したものと朝鮮半島を経由して南方から移入した二つのグループからなることが明らかにされている。従ってこれらは寒冷と温暖という異なる気候への適応を経て、現在の分布を形成していると考えられる。南北集団のこのような適応過程の違いにもとづいて遺伝子の環境適応的な変異を探索することが可能と考え、本研究を計画した。日本の南北16集団61個体、およびサハリン、中国中央部(ハルビン)からのサンプルそれぞれ5個体について、メチオニンシンターゼ遺伝子の第1から第4エキソンまでの約1500bpの配列を決定して解析を行った。その結果70のハプロタイプが決定されたが、これらのほとんどは地理的に特異的なものであり、集団間の遺伝子の交流はこの範囲では制限されていることがわかった。塩基多様度に関しては領域全体で見ると、東北日本(0.0067)、南西日本(0.0060)で両者の間にほとんど差はなかったが、非同義置換に関しては東北日本(0.0017)、南西日本(0.0005)で有意な差があった。日本の集団を北から南まで4ブロックに分けて塩基サイト間の連鎖不平衡を調べたところ中央の2ブロックで多くの連鎖不平衡が検出された。エキソンの塩基置換のうちエキソン2およびエキソン3で非同義置換/同義置換の比が1以上となり、このSNPsについて南北集団で頻度の分布を調べたところ、明確なクラインが検出された。このことはこれらのSNPsに適応的な選択が働いた証拠と考えられる。コナラ属についてすでに公表されているEST markerのいくつかについても南北間で頻度の差があるかどうかを調べた.
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