2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16380125
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宗原 弘幸 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教授 (80212249)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢部 衛 北海道大学, 大学院・水産科学研究員, 助教授 (80174572)
今村 央 総合博物館, 助教授 (00312421)
早川 洋一 国際基督教大学, 教養学部, 研究員 (50384011)
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Keywords | 産卵基質 / 生息地隔離 / ミトコンドリアDNA / アイナメ属魚類 / 人工構造物 / 交雑 / なわばり / 遺伝子浸透 |
Research Abstract |
アイナメ科魚類には、寒帯性種(スジアイナメ)と温帯性種(アイナメ、クジメ)がいる。これらが同所的に分布する温寒帯域では、交雑が起こることが知られている。本研究では、交雑が起こる生態的要因と交雑の組み合わせ、頻度を遺伝マーカーで明らかにし、沿岸環境保全、水産資源管理などの方策を提案することを最終目的として行う。2年目にあたる本年度は、mtDNAでの母種判定方法の確立と、交雑頻度および方向性を野外に設定した調査地間で比較した。その結果、以下のことが明らかになった。 mtDNA2遺伝子座の塩基配列は、明瞭な3つのクラスターを形成し、クラスターの構成はアイナメ1個体を除きほぼ外部形態の種判別結果と一致した。またRFLP法は種内変異の影響を受け、塩基配列による種判別結果との整合性が低かったが、APLP法では100%の確率で塩基配列による種判別結果を反映することが明らかになった。 mtDNAによる母種判別の結果、アイナメのなわばりでは40%(67/155)を超える高頻度でスジアイナメ雌による産卵が見られた。また、天然岩礁域と波消ブロック帯のクジメのなわばりでも、高い割合(約20%)でスジアイナメによる産卵が見られた。一方スジアイナメのなわばりでは、わずか4例(1.9%)のみクジメによる産卵が見られたが、残る98.1%は同種のスジアイナメによる産卵であった。クジメやスジアイナメのなわばり内では、アイナメによる産卵は全ての調査区で一例も観察されなかった。このように本調査海域における交雑は明瞭な方向性が認められ、スジアイナメmtDNAの他の2種への浸透が進行することが示唆された。 3種が近接してなわばりを形成する消波ブロック帯では、スジアイナメの雌は高頻度で交雑し、この種の雌の同種雄の認知が不完全であることが示された。このことは、3種の雄が選好する環境を作り出している人工構造物によって、スジアイナメの配偶者選択を介して、アイナメ属3種の隔離機構が撹乱されることを示唆する。
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