Research Abstract |
21世紀に入り,地球環境保全の意識がますます高まっていくなかで,漁業が生態系に与える影響を最小化するための研究が注目され,混獲投棄の問題を技術的に解決するために漁具選択性の向上や漁具改良の実践が各国,各地で行われてきている。この問題について,対象とする生物種や大きさに対して,混獲投棄されるものとの行動特性の違いを利用した選択漁獲の方法論が1980年代から提案されているが,まだ実際的な応用には至っていない。そこで,漁具認知過程に関連した感覚機能,そして漁具回避能力に関連した運動特性の2つを取り上げて,対象・非対象の生物種別,並びに成長段階別に検討を行い,混獲防除技術のための基礎資料を得ることを目的に実験を行った。実験内容として,当初から実施していた魚類の刺激-反応系に関する行動生理実験を継続し,特にサンマとマアジを実験魚として集魚灯漁法との関係で実験を展開し,光刺激の波長別に光強度と照射時間を変えた実験を行い,網膜運動反応の機構を明らかにした。このほかに,マアジを実験魚として側線系の構造と機能に関する基礎研究を開始した。また,底引網,定置網,カニ籠について漁獲物の組成と投棄の現状,並びにコチを実験魚とした遊泳行動のトロールの漁獲過程の解明と,ガザミ籠の小型個体の漁獲防除のための逃避口の設計について水槽実験と操業実験を行った。これらの成果について,日本水産学会年会と漁業懇話会,またアメリカ合衆国ボストン市でFAOとICES(国際海洋開発協議会)共催の国際シンポジウムに出席し,魚類の視覚生理,コチの遊泳行動,ガザミ籠の今獲防除に関する講演・ポスター発表を行うとともに,世界各地での混獲防除に関する研究の状況について情報を収集し,また関係者との意見交換を実施した。
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