Research Abstract |
沿岸海域で発生した赤潮の消滅過程において殺藻細菌は重要な役割を演じており,赤潮の予防や駆除等に向け将来の実用化が期待されている。我々は,沿岸域に繁茂する大型海藻の表面に膨大な数の殺藻細菌が付着している事実(時に100万/g湿重のオーダー)を発見し,殺藻細菌の供給源として藻場が重要である可能性を示した。本研究では,藻場水域と赤潮水域の殺藻細菌群を比較し,この仮説の検証を試みる。 本年度は,これまでに度々有害赤潮が発生し,養殖魚介類に斃死被害が与えられてきた播磨灘を対象水域として設定し,夏季に現場調査を実施して有害プランクトンの動態を把握すると共に,出来るだけ多くの殺藻細菌の分離を試みた。調査は原則として週に1回実施し,孔径3マイクロメーターのフィルターを通過するものを浮遊細菌,フィルター上に補足されるものを粒子付着細菌とした。寒天平板培養法によってコロニーを形成させて細菌を分離し,5種の主要赤潮藻(渦鞭毛藻のKarenia mikimotoi, Heterocapsa circularisquama,ラフィド藻のChattonella antiqua, Fibrocapsa japonica, Heterosigma akashiwo)に対する各分離細菌株の殺藻活性を2者培養実験で調べた。 浮遊細菌として293株が分離された。そのうち,赤潮藻5種の内1種でも殺滅するものを殺藻細菌としたが,殺藻細菌は24株分離された。このうち,全てがK. mikimotoiを殺滅し,全てがC. antiquaに殺藻作用を示さなかった。他にも2種のみ,3種のみ,4種のみ殺滅するものなどが認められた。粒子付着細菌は458株分離されたが,その中で殺藻細菌は191であり,浮遊細菌に比べて著しく頻度が高かった。このうちK. mikimotoi殺藻細菌は162株を占め最多であった。順にF. japonicaに対して136株,C. antiquaに122株,H. akashiwoに72株,H. circularisquamaに対して66株であった。殺藻の対象範囲と殺藻の種特異性を見ると,極めて多様であった。以上から,播磨灘の海水中においては,多様な殺藻細菌が粒子に付着した状態で高密度に生息していることが明らかとなった。
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