Research Abstract |
(1)マツカワ,Verasper moseri,のメラニン凝集ホルモン(MCH)cDNAをクローニングした.本cDNAは135アミノ酸残基のプレMCHをコードし,17アミノ酸残基からなるMCHを含む.マツカワMCHは他魚種に対して2位が変異している.一方,マツカワ脳抽出物の高速液体クロマトグラフィー分画物を質量分析に付し,MCHを同定した. (2)白背景色で飼育したマツカワの成長は黒背景色飼育魚に比べて有意に優れており,また脳内MCH遺伝子発現量も高かった.一方,無給餌飼育したマツカワの脳内MCH遺伝子発現量は,給餌魚に比べて高かった.白背景において認められたマツカワの高成長は,当該条件で産生量が増加したMCHの食欲増進効果に起因するものと推測される. (3)マツカワの脳下垂体から3種のプロオピオメラノコルチン(POMC)遺伝子をクローニングした.POMC-AcDNAは199残基,POMC-BcDNAは214残基,POMC-CcDNAは220残基のプレホルモンをコードする.POMC-AとBはα-黒色素胞刺激ホルモン(α-MSH),β-MSH及びβ-エンドルフィンを含むが,POMC-Cはα-MSHとβ-MSHのみを含む.一方,マツカワ脳抽出物の高速液体クロマトグラフィー分画物を質量分析に付し,これら3種のPOMCに由来するすべてのホルモンペプチドを同定した. (4)マツカワにおいてPOMC-Aは脳下垂体のみで発現するが,POMC-B及び-Cは脳,鰓,心臓,脾臓,胃,腸,生殖腺,筋肉,血液,及び皮膚でも発現する.脳でのPOMC遺伝子の発現は給餌の有無による影響を受けなかった. (5)免疫組織染色により,マツカワ脳下垂体の前葉と中葉にPOMC産生細胞を認めた.脳では視床下部の外側隆起核に細胞体が存在し,神経線維が終脳,視床下部,及び中脳に投射していた.
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