Research Abstract |
1.プロオピオメラノコルチン(POMC)は食欲抑制作用を有するα-黒色素胞刺激ホルモン(MSH)類とストレス応答に関与する副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の共通前駆体である。マツカワ(Verasper moseri)では3種のPOMCが脳下垂体の前葉と中葉で発現することを逆転写ポリメラーゼ連鎖反応によって認めた。さらに,これらが同一の細胞で発現することをin situハイブリダイゼーション法によって認めた。 2.凍結切片にレーザー光を照射する質量分析法によって,マツカワ脳下垂体前葉にPOMCのアミノ末端ペプチド(N-POMC),ACTH, ACTHのC末端ペプチド(CLIP),アミノ末端遊離のDes-Ac-α-MSH,およびβ-MSHを同定した。また,神経中葉ではN-POMC, Des-Ac-α-MSH,α-MSH, CLIP,β-MSH,アセチル化β-エンドルフィン,およびβ-リポトロピンのアミノ末端ペプチドを同定した。マツカワ脳下垂体前葉と中葉におけるPOMCの翻訳後プロセッシングは哺乳類に類似する。しかし,前葉でACTHがさらにDes-Ac-α-MSHに分解される点は異なる。 3.ヤツメウナギではMSHとACTHが別々の遺伝子にコードされていることを南半球のGeotria australisとMordacia mordaxを用いて明らかにした。また,それぞれの転写調節機構が異なることをPetromyzon marinusの遺伝子をAtT20/D16v細胞に導入し,レポーターアッセイによって示した。 4.合成メラニン凝集ホルモン(MCH)の脳室内投与によりキンギョ(Carassius auratus)の摂餌頻度が減少した。このMCHの作用は,哺乳類における食欲亢進作用とは異なる。これは,魚類食欲に対するMCHの直接作用を認めた最初の成果である。
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