Research Abstract |
今年度は,まず多面的機能としての教育機能の特徴を概念的に整理するとともに,その考察を踏まえて農業の教育機能で最も取り組みが進んでいる酪農教育ファームおよび地域交流牧場を対象にして,それらの活動状況と経営的特徴を実証的に明らかにして,酪農を中心とする畜産経営の多角化と教育機能との結合性について考察を加えた.そして,最後に今後の畜産経営における多角化と教育機能の増進に関する政策的な課題を展望した。その結果得られた知見は以下のとおりである. 1)教育機能は,人的資源に直接効果が及ぶ点や,基礎的な教育として陳腐化がみられない点で特徴を有している.また,技術的結合性のみならず,制度的結合性を有している. 2)地域交流牧場の経営活動は,全体として交流型の多角化が進んでおり,交流指向が一般の酪農家にくらべて強いといえる.このうち,提供する体験サービスは,作業体験ほど生産との技術的結合性が強く,分離提供が可能ではない.この点は特に家族経営ほど強い. 3)以上の考察を踏まえた多角化と体験サービス提供との結合性に関するモデル計測結果から,生産規模との技術的な結合性はみられなかった.しかし,生産活動の多角化と体験サービス提供との結合性については,U字型の形状を示していることが実証的に明らかにされた.このことから,範囲の経済に起因する技術的結合性が可変的であることがいえる. 4)酪農教育ファームの認証を得ている経営は,体験サービスの提供が積極的であることが統計的にも裏づけられ,体験サービス提供の制度化により,教育機能の高まることが明らかとなった.さらに,法人化の違いでみると家族経営および家族経営以外の法人経営では,体験サービスの提供の水準が高くなり,家族経営法人では低下するため,制度的結合性も可変的である. 5)以上から,酪農の教育機能に関しては,生産規模との結合性はみられず,デカップリングされた正の外部性が大きいといえる.
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