Research Abstract |
1.農業用水路における生息場評価 16年度からの継続で,岩木川左岸水路網を主な対象に,魚類の移動と生息場選択について調査した.水路を用水路・承水路・排水路・ため池掛りと大きく分類した後,制水ゲートや揚水機の存在サイフォンなどによってセグメント化した.それぞれの場所で遡上難易度を設定し,魚類採捕および微生息場スケールの物理環境計測を行った.17年度は調査地点や季節を増加させた.多変量解析により,魚類群集の特性から水路の分類を行った.また,電気ショッカーによるより定量的な採捕結果は,その場の微少環境構造も含めて,重回帰分析等を行い,魚種によってその場所の微少環境が重要なのか,それとも水路の位置付けがより重要なのかを明らかにした.これらの結果より,潅漑期は制水ゲートの存在が魚類組成に影響し,非潅漑期は,制水ゲートの影響は薄れ,用水路,排水路などの水路区分がより明確になることが明らかとなった.また,比較対象として,関東地方における水路網の調査も行い,タモロコを指標種として環境選択性を評価した. 2.ため池に生息する魚類・鳥類に関する研究 ため池に生息する鳥類に関して,主にため池の構造と採餌場所,営巣場所に注目し,生息密度や繁殖成功等の視点から調査した.同時に生息魚類の分布・密度調査も行なった.餌となる比較的小型の魚類は,近年移入されたオオクチバスの影響を強く受けており,その生息密度はため池の構造や植生によって大きく異なった。すなわち,水際部に植生帯が広く分布し,仔稚魚期をそこで過ごすことが出来るような水位が保たれている池や,ヒシなどの浮葉植物に水面を広く覆われるでは,比較的小型魚の密度は高かった.魚食性鳥類は,魚食魚との競争では一方的な影響を受け,小型魚の密度によって生息場所を変える事が明らかとなった.特に繁殖期により小型の魚を必要とするカイツブリなどでは顕著な傾向が認められた.
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