Research Abstract |
本年度は,山形県庄内町の実際に営農が行われている水田と,山形大学農学部附属農場水田の2地点で,チャンバー法によるメタンと一酸化二窒素放出の測定および関連する物理パラメータの測定を,田植え後から積雪まで約6ヶ月間,週に1〜2回の頻度で継続して行なった。本研究の主眼である一酸化二窒素放出に影響する農業土木因子の中で,特に代表的な潅漑水操作である間断灌漑に着目して,測定を行った。その結果,以下のような成果が得られた。イネの生育期の水田からのメタンと一酸化二窒素の放出の変動については,メタン放出と一酸化二窒素放出とが,相反する傾向を持つことが確認された。すなわち,メタン放出が増加する時期には一酸化二窒素放出は減少し,一酸化二窒素放出が増加する時期にはメタン放出が減少する傾向が,明瞭に示された。間断灌漑で水田土壌のORPが大きく変化するにつれ,酸化状態ではメタンが,還元状態では一酸化二窒素が放出されやすいことが確認された。しかし,急速な灌水,落水とガス放出のピークとは必ずしも重ならず,ガス放出が時間遅れする状況が把握された。イネの生育状態と,メタンと一酸化二窒素の放出の季節変動との間には明瞭な関係は認められなかった。また,稲刈り後積雪で覆われるまでの水田土壌からのガス放出の観測では,稲刈り後の水田土壌からの一酸化二窒素の放出は低いレベルであるが,メタンについては突発的な放出が観測された。しかし,この点に関しては,本研究での測定頻度では突発的なガス放出のピークを取り逃がしている可能性が指摘された。 実際の圃場での観測では,降雨による撹乱の影響を避けられないため,特に間断灌漑時には,かならずしも予定した実験条件どおりの水管理とならないことが,方法上の問題点として挙げられた。また,本年度行われた週に1〜2回の測定頻度では,ガス放出のピークを取り逃がす可能性が指摘された。
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