Research Abstract |
国内の低平農地域では近年,乾田化が進むとともに都市化による混住化も進みつつあり,洪水時には従来にも増して正確な内水位の予測や的確な排水施設の制御が求められている.一方,アジアモンスーン地域の国外の低平農地域では,一般に排水施設の整備水準が低く,低い整備水準下でのより効率的な施設管理が望まれている.本研究では国内外の低平農地域を対象とし,その洪水緩和機能の定量化を試みるとともに,得られた洪水緩和機能を積極的に利用した内水位の予測手法や排水施設の制御手法の開発を目指す.平成17年度は洪水緩和機能の定量化を実証的に進めるため,まず国内では,多々良川流域でデータの収集を進めるとともに,筑後川下流域の千代田流域には試験流域を設け,降雨量,水位ならびに高精度GPSによる可降水量の観測システムを設置し,データの集積に努めた.また,佐賀平野を対象に,平野内の3箇所のGPS可降水量と実際の降水量の過去約7年間の長期的な解析を行った.国外では,北部ベトナム紅河デルタの低平農地域に位置するPhu Lamコミューン地区を対象に水文データの収集ならびに流域踏査,聞き取り調査を実施した.さらに,得られた観測データをもとに数値実験を行い,両流域における洪水解析モデルや最適化手法などに関する検討を行った.その結果,先ず国内ではGPS可降水量と実際の降水量から対象域における日雨量100mm以上の大雨を事前に予測するためのインデックスを作成した.さらに,同インデックスを適用することにより,良好な大雨の予測結果が得られ,GPSからの情報(GPS可降水量)が大雨の予測を通して低平農地域における洪水緩和の一助となりうることが示唆された.一方,Phu Lam地区では,暗渠の構造上の問題や暗渠や水路の管理上の問題から,排水機場から離れた水田では1週間から10日にもおよぶ長期間の湛水の危険性が数値実験から示唆され,現地聞き取り調査によって湛水の長期化が定量的に確認された.
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