2006 Fiscal Year Annual Research Report
インテグリンリンクドキナーゼ不活化遺伝子導入による神経原線維変化モデルの開発
Project/Area Number |
16380195
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
石井 利明 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (50264809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮沢 孝幸 国立大学法人京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (80282705)
古岡 秀文 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (60238665)
西村 昌数 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (50011995)
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Keywords | ILK / 神経原線維変化 / アルツハイマー病 / 病態モデル / タウタンパク / 異常リン酸化 / 脳 / 記憶学習 |
Research Abstract |
直鎖型polyethylenimineを利用した非バイラスシステム発現系を用いて、野生型インテグリンリンクドキナーゼ(ILK)ならびにその不活性型変異体(DN-ILK)遺伝子をマウス脳に導入発現し、遺伝子導入2週間後にホールボード試験を行い自発運動と情動に対する影響を評価した。その結果、野生型ILKを発現したマウスの自発運動は対照群と比べて変化が認められなかったが、DN-ILK発現したマウスは不安・抑うつなどの情動性変化を生じる個体(〜60%)が出現した。次に、モーリス水迷路試験を行い、海馬機能を反映する空間記憶能力に対する影響を評価した結果、野生型ILKを発現したマウスはflag testにおいて高い学習効率が認められ、さらにprobe testにおいても記憶力向上の傾向が認められた。一方、DN-ILKを発現したマウスの学習効率と記憶能力は、対照群と比べて有意な変化は認められなかった。野生型ILKを発現したマウスは学習効率ならびに記憶力が向上する傾向が認められたので、記憶学習能力に関与する海馬領域に焦点を絞り、遺伝子導入3週後の急性期マウスと12週後の慢性期マウスの脳を用いて生化学的評価を行った。野生型ILKを発現した急性期マウス海馬のILK酵素活性は、コントロール群と比べて有意に高い活性が認められ、逆にDN-ILKを発現したマウスではILK酵素活性の有意な低下が認められた。さらに、タウタンパク質Ser^<199>ならびにSer^<202>の異常リン酸化量ならびにそれらを触媒するGSK-3βの活性型(Tyr^<216>-p)量は、DN-ILK発現群の急性期マウス海馬においてコントロール群に比べて有意に増加した。一方、野生型ILK発現群においてはそれらに変化は認められなかった。野生型ILKを発現した慢性期マウス海馬のILK酵素活性は、コントロール群と比べて、急性期の場合と同様にいぜん高い活性が認められた。ところが、DN-ILKを発現したマウスのILK酵素活性は、急性期で認められたILK活性の低下が、慢性期ではコントロール群のレベルにまで回復した。それに伴い、急性期で認められたタウの異常リン酸化量とGSK-3βの活性型量の増加も回復した。DN-ILKを発現したマウス海馬の内在ILKタンパク質の発現量は、慢性期において顕著な増加が認められたことから、脳の生理機能を維持するための適応機構が生じ、内在ILKの発現誘導を促進することで、ILKならびGSK-3βの酵素活性を正常レベルにまで回復させ、タウタンパク質の機能を維持していることが示唆された。
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Research Products
(4 results)