2004 Fiscal Year Annual Research Report
外洋・深海生態系における人為汚染物質の分布と輸送・蓄積過程
Project/Area Number |
16380217
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西田 周平 東京大学, 海洋研究所, 教授 (70134658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田辺 信介 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (60116952)
太田 秀 東京大学, 海洋研究所, 教授 (10013591)
西川 淳 東京大学, 海洋研究所, 助手 (10282732)
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Keywords | 深海生態系 / 食物網 / 汚染物質 / 栄養段階 / 有機スズ化合物 / 有機塩素化合物 / 安定同位体比 / 脂肪酸組成 |
Research Abstract |
2002年にスル海周辺海域で採取した生物(約40種)の有機スズ化合物濃度を分析した。ブチルスズ化合物(TBT,DBT,MBT)およびオクチルスズ化合物(TOcT,DOcT,MOcT)はGC-FPDで、フェニルスズ化合物(TPT, DPT)はGC-MSで定性・定量した。炭素・窒素の安定同位体比は質量分析計で測定した。この結果、ブチルスズ化合物(BTs)とTPTが相対的に高い濃度で検出されたが、魚類や甲殻類等の大きな分類群による残留濃度の差はみられなかった。また魚類に関して、試料採取深度と有機スズ化合物残留濃度との間の相関性は低く、生息深度による蓄積の特徴は認められなかった。しかし、スル海の深海生物では、全体的にTPTに比べBTs濃度の汚染レベルが高値であった。TBT、TPTはともに低濃度を示したが、全ての栄養段階の生物種から検出された。以上のことから、有機スズ化合物は深海生物間の捕食-被捕食関係を通して輸送され、高次栄養段階の生物へ蓄積する可能性が考えられた。本研究結果と他海域のBTs残留濃度を比較すると、駿河湾>東北沖>土佐湾>東シナ海>スル海周辺海域の順で高く、北太平洋西岸において、南方海域は北方海域に比べ清浄であることが判明した。 2004年6月に相模湾(淡青丸KT-04-5次航海)、また2005年2〜3月に西部熱帯太平洋(白鳳丸KH-04-5次航海)において、表層から深海底に及ぶ生息域から各種生物、マリンスノー、海底堆積物、および懸濁粒子を採集した。動物試料は採集後同定・計数した。これらの試料の一部は-80℃で凍結保存し、残りは生態学的解析のためホルマリン固定した。
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