Research Abstract |
アレン類は2つのπ結合が1つのsp混成軌道を共有する特異な構造を有している.アレンの1位に電子吸引性基としてフェニルスルホニル基を持ち,更に適当な炭素側鎖を1位に有する化合物1を対応するプロパルギルアルコール誘導体から合成した.炭素側鎖にアルキン部を有する化合物1をロジウム触媒存在下で,一酸化炭素気流下或いは10気圧の一酸化炭素圧下でPauson-Khand型反応に付したところ,速やかに環化反応が進行して対応するbicyclo[4.3.0]-nonadienone体及びbicyclo[5.3.0]decadienone体を良好な収率で与えた.一方,本反応を一酸化炭素の代わりに窒素気流下で行ったところ,cycloisomerizationが進行し,cyclohexeneやcycloheptene骨格が高収率で得られた.また,4置換アレン体を用いてcyclosiomerizationを検討したところ,生成したcycloheptene体が更に電子環状反応を起こして,bicyclo-[5.2.0]nonene誘導体が得られることが明らかとなった.さらに.アレンと等電子構造を有するカルボジイミド官能基をアレンの代わりに用い,分子内ヘテロPauson-Khand反応を行って対応するpyrrolo[2,3-b]indol-2-one骨格の効率的構築法を開発した.一方,化合物1の炭素側鎖の末端に活性メチン基が存在する場合,塩基処理により容易にエンド型閉環反応が進行して,対応する環化成績体が高収率で得られることが判明した.本反応を詳細に検討したところ,本法では5〜7員環化合物は高収率で生成するが,8員環化合物合成には適用できないことが判明した.上記の成果に加え,以下に示すアレン官能基の新規利用法の検討も行った.即ち,ベンゼン環あるいはオレフィンで2つのプロパルギルアルコール部を連結した基質を出発原料として,ベンゼンスルフェニルクロリドとの反応をジェノフィル存在下行うことにより,ビスアレンの生成,電子環状反応,引き続く[4+2]環化反応を連続的に起こさせ,多環式化合物を一挙に合成する新手法の開発に成功した.本法を用いて,ステロイド骨格の新規合成を完成させた.本反応では,ベンゼンスルフェニルクロリドの代わりに対応するリン試薬を用いると,[2+2]型環化反応が進行し,シクロブテン誘導体が得られることも明らかとした.また,allenylaniline誘導体のパラジウム触媒を用いる環化反応を検討し,2,3-置換インドールの新規合成法の開発にも成功した.
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