2006 Fiscal Year Annual Research Report
インスリンDDSのためのグルコース応答性ナノ薄膜の開発
Project/Area Number |
16390013
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安齋 順一 東北大学, 大学院薬学研究科, 教授 (40159520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 友典 東北大学, 大学院薬学研究科, 講師 (50302170)
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Keywords | ナノ薄膜 / グルコース / インスリン / ナノカプセル / 放出 / 透過性 / ポリアミン / ポリスルホン酸 |
Research Abstract |
本年度は、新しい材料を用いたナノ薄膜の調製と糖や電場に対する応答特性の検討および蛍光挙動を指標とした新たな糖検出システムの確立を行った。さらに、ナノ薄膜のインスリンに対する透過性の検討を実施した。その結果、フェニルボロン酸誘導体や多糖類累積膜が糖応答性薄膜材料として有望であることが見出された。インスリンのナノ薄膜透過性に関しては、高分子交互累積膜法によりインスリンを封入したナノカプセルを調製することに成功し、このナノカプセルからのインスリンの放出挙動を詳細に検討した。ナノカプセルを調製するためには、インスリンを炭酸カルシウム微粒子に封入して、この微粒子表面にポリアミンとポリスルホン酸を静電的に交互に吸着させて交互累積膜とし、事後に炭酸カルシウムをEDTAにより溶解させてインスリンの封入された中空カプセルとする手順を確立した。この手順で調製したインスリン封入カプセルは直径が数ミクロンの球状であることが、走査電顕により明らかになった。次に、このカプセルからのインスリンの放出挙動を検討したところ{放出速度がカプセル膜を構成する高分子材料の種類に著しく依存することが判明した。枝分かれ構造を有するポリエチレンイミンとポリスルホン酸を用いて作製したカプセルにインスリンを封入すると、インスリンは速やかにカプセル外へ放出され、30分後に約70%がカプセル外へ放出された。30分以後のインスリンの放出はほぼ定常状態に達し、放出は非常に緩やかであった。一方、直鎖高分子であるポリアリルアミンを用いてカプセルを作製すると、カプセルからのインスリンの放出は著しく抑制され、30分後の放出率は10%程度にとどまり、以後放出はほとんど見られなかった。このように、カプセルの透過性は用いる高分子材料の化学構造に著しく依存することが判明した。また、カプセル膜の厚さも透過性を左右する大きな因子であることも明らかになった。
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