Research Abstract |
今年度は,主として以下の2点について明らかにした。 1.IL-1刺激NF-kB活性化におけるc-Srcチロシンキナーゼの部位についての検討。 我々はすでに,ヒトグリオーマ細胞をIL-1刺激した際,転写因子NF-kBとAP-1が活性化されること,この際IL-1によるc-Srcの活性化を伴うこと,また,c-Srcの活性化にはTRAF6の会合が必須であることを明らかにした(Funakoshiら.Eur J Biochem 2003)。しかしながら,AP-1とNF-kB活性化にc-Srcのどの部位が関与するか明らかでなかった。今回,c-Srcの種々の部位欠損変異体を作成した所,c-Srcのキナーゼ部位は,AP-1の活性化に必須であるが,c-Srcのキナーゼ活性自体は,NF-kBの活性化には関与しないことを明らかにした。さらに,詳細に検討した結果,c-Srcの361-440アミノ酸の部位がIKKとの結合とNF-kB活性化に必要であることがわかった(Funakoshi-Tagoら.JB,2005)。 2.レチノイン酸(ATRA)によるHL-60分化に対する接着斑キナーゼ(FAK)の役割解析。 FAKを導入したHL-60(HL-60/FAK)は,TRAILによるアポトーシス誘導に抵抗することを報告した(Tamagikuら.2004)。一方,ATRへは,HL-60に作用して好中球系に分化させることが知られているが,HL-60/FAKは,ATRAによる分化誘導に抵抗する。その機序を検討したところ,HL-60/FAK細胞では,転写因子C/EBPaの活性化が阻害されており,その原因として,FAKの過剰発現がRbタンパクのSer807/811の過剰なリン酸化を起こし,このため,RbがC/EBPaと結合できないためと考えられた(Hashimotoら.Cell Signaling,2005)。
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