2006 Fiscal Year Annual Research Report
ダイオキシン受容体の細胞内情報伝達と生理機能の解析
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16390036
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Research Institution | Research Institute for Clinical Oncology, Saitama Cancer Center |
Principal Investigator |
川尻 要 埼玉県立がんセンター, 臨床腫瘍研究所, 主幹 (50142112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
生田 統悟 埼玉県立がんセンター, 臨床腫瘍研究所, 主任研究員 (00262072)
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Keywords | AhR / 大腸がん / 発がん抑制 / シャトルたんぱく質 / APC / 発生・分化 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
<緒言>Aryl hydrocarbon Receptor (AhR)は受容体型転写因子であり、ベンゾピレンによる発がんを促進する。我々は、AhRが細胞質b核間を行き来するシャトルたんぱく質であり、細胞密度依存的にがん抑制遺伝子産物APCやSmad2と同様に細胞内局在を変化させることを明らかにした。また、AhR欠損マウスでは大腸がんを発生させるAPCやSmad3変異マウスと同様に脱肛が高頻度に観察される。そこでAhR欠損マウスにおける大腸がんの自然発症についての研究を開始した。 <実験・結果>独立した2箇所の施設で飼育したAhR遺伝子欠損AhR(-/-)、ヘテロAhR(+/-)、野生型AhR(+/+)マウスを用いて(1)腫瘍発生の経時的観察および(2)遺伝子型による生存期間の比較を検討した。(1)においては、6から70週齢マウスを経時的に屠殺し、隆起性病変の肉眼的計測と病理組織学的検索を行った。また(2)においてはマウスを最長70週齢以上まで飼育し、各遺伝子型マウス群と生存期間との関係を検討した。(1)隆起性病変はAhR(-/-)盲腸部に主に観察されたがAhR(+/-)、AhR(+/+)では全く観察されなかった。病変は10週齢以上では全例(83/83例)に観察され、その発生時期は2箇所の施設で同時期であった。腫瘍の大きさは経時的に大きくなり30〜40週齢でほぼ最大になった。病理組織学的には、6、9週齢では軽度異型と中等度異型が、10週齢では中等度異型と高度異型が.11週齢以上では中・高度異型と腺腫を伴った腺癌が観察された。腺癌と診断させた17例中、12例(71%)には癌細胞の粘膜筋板を越えた浸潤像が認められた。(2)生存期間は、AhR(-/-)群がAhR(+/-)、AhR(+/+)群より有意に短いことが認められた(Log rank test : p<4.4x10^<-9>)。(1),(2)の実験を通してAhRが大腸がん抑制作用をもつことが示唆された。
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