Research Abstract |
前年度までに作成したparchorinのホモノックアウトマウスを,当機関でバッククロスを行い,繁殖維持した.これまでにparchorinノックアウトはマウスの発生・生存・成長・繁殖には必須ではないことが示唆されていたが,これが徐々に確認された.また,消化機能にも著変がないことは,全身状態の観察から明らかであったが,摘出胃を用いた胃酸分泌能を測定したところ,基礎分泌,刺激分泌とも野生型と全く変化がなかった.そこで,parchorinが重要な生理学的機能を果たしているとしても,他の蛋白の発現誘導によって補償されていると考え,Affymetrix GeneChipを用いたトランスクリプトーム解析を行った.胃粘膜においては,ある種のトランスポーターを含む幾つかの蛋白が過剰発現していた.最も注目されたのは脳の脈絡叢において,parchorinの3'非翻訳領域がノックアウトマウスにおいても高発現していたことである.これは,組織特異的な,予期せぬスプライシングバリアントの存在を示唆しているため,現在その実体を検討中である.また,parchorinの生理的役割を解析するために,yeast two-hybrid法を用いて,parchorinと結合する蛋白質を検索した.その結果,C末端側にPDZドメインを2つ持つ蛋白質であるsynteninを同定した.synteninは膜トラフィックに関与していることが推定されている蛋白であり,N末を介してparchorinと結合していた.一次培養マウス脈絡叢細胞にRNAiを適用したノックダウンの実験などから,synteninは,parchorinが塩素イオン輸送のために膜へ移動するするとき,PIP2を介した制御をかけていることが示唆された.
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