2004 Fiscal Year Annual Research Report
発生にかかわるWntシグナルによる内分泌代謝・老化調節の解明
Project/Area Number |
16390091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 寿郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 科学技術振興特任教員(特任教授) (80323020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅場 浩 東京大学, 先端科学技術研究センター, 科学技術振興特任教員 (20361678)
馬郡 健太 東京大学, 先端科学技術研究センター, 科学技術振興特任研究員 (90361683)
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Keywords | LRP5 / WNT signal / insulin / islet / obesity / Acetyl-CoA synthetase / Kruppel-like factor KLF15 / very low-density lipoprotein |
Research Abstract |
栄養の過剰摂取は、肥満・高インスリン血症を引き起こし細胞老化の原因となる。これとは逆にカロリー摂取制限は異化作用のシグナルを亢進させ、インスリンシグナルを減少させ細胞老化を抑制する。私たちは絶食させたマウスのトランスクリプトーム解析から、絶食時に誘導されるKruppel-like factor KLF15がミトコンドリアタイプのアセチル-CoA合成酵素の転写調節に中心的役割を担うことを明らかにした。ミトコンドリアタイプアセチル-CoA合成酵素は飢餓・絶食時のATP合成に重要な役割を担うと考えられる。KLF15は普遍的転写因子Splと相乗作用をもってプロモータを活性化する。KLF15は近年脂肪細胞の分化に寄与している報告もされた。 肥満に伴うインスリン抵抗性は2型糖尿病の重要な原因である。インスリン抵抗性に伴い、膵ラ氏島は肥大化を伴ったインスリン分泌を亢進させる。しかしながら、加齢と共にその代償機構は破綻し、膵ラ氏島のアポトーシスを伴う疲弊を招き、2型糖尿病へと発症する。この機構にWntシグナルが関与しているかどうかを解析した。高脂肪食負荷の肥満マウスの膵ラ氏島を単離し、転写因子を中心に網羅的発現解析を行った。その結果18個の転写因子の遺伝子発現が最大6倍上昇か、下降していた。それらをインスリン分泌細胞株MIN6にレトロウィルスにて発現させ、インスリン分泌を解析したところHMGボックス転写因子SOXがインスリン分泌を抑制させることが明らかになった。SOXをレトロウィルスで発現させることにより、細胞内インスリン含量ならびにインスリンmRNAの低下、グルコース依存性ATP産生、細胞内カルシウムの上昇抑制が見られた。インスリンプロモーター解析から、膵臓の発生、膵β細胞の機能維持に重要な役割をになう転写因子PDX1に直接結合し、PDX1の転写機能を抑制することが明かにされた。さらにSOXは発生、細胞分裂に重要な役割を担うWntシグナルの転写因子βカテニンの活性を抑制することが明らかにされた。SOXは細胞周期にかかわるサイクリンのD1はベータカテニンレベルで直接またサイクリンE1はそのプロモータ上でLRH1とβカテニンの相乗作用を抑制した。さらにSOXをレトロウィルスの安定発現株は細胞の増殖が20%程度に抑制された。以上ことから、SOXはPDX1およびβカテニンのco repressorとして機能し、肥満に伴うインスリン抵抗性に対する代償的インスリン分泌亢進作用に寄与していることが示唆された。
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Research Products
(3 results)