2005 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス性脳炎における組織破壊誘導シグナル分子の研究
Project/Area Number |
16390112
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小柳 義夫 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80215417)
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Keywords | HIV / 脳症 / 神経細胞破壊シグナル / マクロファージ / グリア細胞 / 海馬スライス培養 |
Research Abstract |
ウイルス感染による脳組織構築に対する影響を把握できる実験系である海馬スライス培養系を使って、HIV感染細胞が産生するシグナル分子による神経組織障害過程が解析できるか検討した。その結果、培養開始時からウイルス感染マクロファージとの共培養を行うとスライス培養開始後に見られるCA1とCA3領域の層構造形成、ならびに、歯状回と周辺グリア層形成などの神経系組織の再構築反応が明らかに阻害されることが判明した。次に、培養後2週目に神経細胞層と周辺のグリア層の再構築が完了し、その維持が可能になっている海馬スライス培養にウイルス感染マクロファージとの共培養を行うと、スライス内の神経細胞全般に脱落が見出されるとともに、特にCA3領域から歯状回の神経細胞層に際立った脱落が観察された。一方、神経細胞の脱落とは対照的にアストロサイトならびにマイクログリア細胞の形態変化からこれらの細胞の活性化が推測された。その後の詳細な神経組織の形態学的変化の解析から、神経細胞のアポトーシス、軸索領域の脱落が観察された。さらに、この海馬スライス上に神経幹ならびに未分化細胞を維持するNeurosphere培養細胞をのせると、神経ならびにグリア細胞への分化過程が再現できるが、HIV感染マクロファージの存在下では、神経細胞への分化が特異的に抑制されることが判明した。これらの事実は、HIV脳症組織内に多く見られるHIV感染マクロファージ細胞は神経組織に対する障害ならびに分化抑制シグナル因子を遊離していることがわかった。
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Research Products
(6 results)