Research Abstract |
線虫感染に対する粘液反応の役割を明らかにする目的で,(A)in vitroにおけるNippostrongylus brasiliensis (Nb)およびHeligmosomoides polygyrus (Hp)の小腸由来細胞株IEC-6細胞との相互作用の分子論的解明,及び(B)再感染防御における粘液の役割に関するin vivoでの研究を実施した. A.線虫Nb及びHpの幼虫及び成虫をIEC-6細胞とともに培養すると,24時間の観察では,各線虫のIEC-6に対する物理的接着は認められず,in vivoにおいては物理的接着以外の定着機構が存在すると推測された.培養液にIL-6/IL-13を加えIEC-6を培養iすると,シアル酸転移酵素Siat4c,硫酸基転移酵素30ST1発現が充進する.IEC-6細胞におけるSiat4c,30ST1発現が充進した状態で,Nb成虫を培養系に入れ,24時間共培養した結果,Nbには形態的に変化は見られないものの,Nb成虫におけるheat shock protein (Hsp)20,Hsp70発現のレベルが有意に低下することが明らかになった. B.再感染防御に粘液あるいは粘液糖鎖の変化が何らかの役割を果たすか否かを明らかにするため,ラットにNbを感染させ,4週後にNbを再感染させた.その結果,再感染ラット小腸では初感染時に較べて,きわめて早期に30ST1発現が充進することが明らかになり,の発現上昇は,線虫の早期排除の時期と一致していた. 以上のごとく,線虫の障害排除には,in vitro実験の結果から上皮細胞におけるSiat4c及び30ST1発現亢進がなんらかの役割を果たしてることが示され,さらに,in vivoの系においても,それを支持する結果が得られた.
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