2005 Fiscal Year Annual Research Report
尿細管・糸球体フィードバック活性の調節による新たな腎不全治療法の開発
Project/Area Number |
16390158
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
安部 陽一 香川大学, 医学部, 教授 (10047227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 成 香川大学, 医学部, 助手 (10325334)
木村 正司 香川大学, 医学部, 助教授 (30253264)
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Keywords | 尿細管・糸球体フィードバック / 腎微小循環 / 腎不全 / 高血圧 / ダール食塩感受性高血圧ラット / 輸入細動脈 / ATP / スラミン |
Research Abstract |
腎臓には、尿細管・糸球体フィードバック(Tubuloglomerular feedback:TGF)機構を含む腎固有の自己調節機構が存在し、これにより腎機能の恒常性を維持している。この恒常性維持機構の破綻が各種腎症および高血圧の発症・進展に繋がる。本研究目的は、TGF機構の刺激伝達メカニズムの全容を解明して、TGF機構の破綻が各種腎症の発症・進展に如何に関与するかを明らかにし、次いで刺激伝達物質に焦点を当てた新たなる腎障害の治療法を開発することである。前年度の研究により、腎障害を生じるモデル動物であるDahl食塩感受性高血圧ラット(Dahl-Sラット)では、TGF活性が異常に亢進していること、また伝達物質としてATPが働いていることを正常血圧ラットで証明した。そこで、本年度では、腎障害モデル動物で認められたTGF活性の異常を、伝達物質の阻害薬を外因性に投与することで、TGF機構が正常化出来るかそして腎障害の発症を阻止出来るかについて検討した。1.TGF活性異常の正常化:Dahl-SラットにATP受容体(P2)拮抗薬であるスラミンを投与し、TGF反応を観察した。高食塩食で飼育したDahl-Sラットの輸入細動脈径は、低食塩食ラットのそれに比べて有意に小、即ち収縮していた。スラミン投与の高食塩食ラットの輸入細動脈は、有意に大で低食塩ラットに近似していた。スラミンは、TGF活性の異常亢進を是正したと言える。2.スラミンの血圧への影響:Dahl-Sラットを4週間高食塩食で飼育すると、血圧は著明に上昇し高血圧状態を来す。しかしながら、スラミン投与ラットを高食塩食で飼育しても血圧上昇が認められなかった。3.スラミンの尿中蛋白排泄への影響:高食塩食ラットでは、顕著な蛋白尿が観察されるが、スラミン投与群では正常レベルに留まった。以上、Dahl-SラットではTGF活性が異常に亢進しており、伝達物質であるATPの作用を受容体遮断薬、スラミンで阻害すると、TGF活性の正常化とともに高血圧の発症および腎障害も予防出来た。これらの結果は、TGF活性の是正は腎不全の治療に繋がることを示すものである。
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Research Products
(6 results)