2005 Fiscal Year Annual Research Report
心不全におけるマスト細胞、幹細胞因子・c-kit系の解明
Project/Area Number |
16390223
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松森 昭 京都大学, 医学研究科, 助教授 (70135573)
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Keywords | マスト細胞 / 幹細胞因子 / 心不全 / 心筋炎 / c-kit |
Research Abstract |
われわれは、ヒト心不全およびマウス心不全モデルにおいてマスト細胞、幹細胞因子(SCF),c-kit(SCF受容体)の変化を検討し、また、2系統のマスト細胞欠損マウスを用いて、心筋炎におけるマスト細胞、SCF-c-kitの関連について調べた。 【方法】 ヒト心不全および脳心筋炎ウイルス性(EMCV)心筋炎マウスの心臓においてトルイジングブルー染色を行い、マスト細胞数を計測し、SCF,c-kitは定量的PCR法により検討した。2系統のマスト細胞欠損マウス((1)W/W^V:c-kit受容体欠損 (2)S1/S1^d:SCF欠損)とその対照マウスに対し、EMCVを接種して心筋炎モデルを作成し、7日後の心臓の組織的所見、14日後の生存率を検討した。さらに、これら2系統のマウスに対しそれぞれの方法でマスト細胞を再構築させて、同様に心筋炎モデルを作成し、心筋炎組織の評価と、マウスマスト細胞プロテアーゼ(mMCP)-4,-5,メタロプロテアーゼ(MMP)-9の遺伝子の発現を検討した。 【結果】 ヒト心不全およびEMCV心筋炎マウスにおいてマスト細胞数が増加し、SCF発現が亢進することが明らかとなった。W/W^V、S1/S1^d群は、それぞれの対照群に対して、生存率は良好であった。また組織学的評価でも、炎症細胞浸潤、壊死ともに軽度であった。マスト細胞を再構築させたW/W^V、S1/S1^d群では、その対照群に対して、炎症細胞浸潤、壊死ともに悪化を認めた。さらに、mMCP-4,-5,MMP-9の遺伝子発現は、マスト細胞を再構築させたW/W^V群では、その対照群に対して、有意に上昇しており、mMCP-4とMMP-9,mMCP-5とMMP-9で相関関係も認められた。 【総括】 心不全、心筋炎においてマスト細胞,SCF,c-kit系が活性化し、マウスウイルス性心筋炎において、マスト細胞による線維化の課程が、急性期に始まっているということが示唆され、マスト細胞活性化抑制や、SCF-c-kitシグナル伝達の制御により心不全、心筋炎の治療が可能となることが示唆された。
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Research Products
(6 results)