2005 Fiscal Year Annual Research Report
カンピロバクター腸炎後ギラン・バレー症候群の発症機構:細菌側要因の分子基盤
Project/Area Number |
16390254
|
Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
結城 伸泰 獨協医科大学, 医学部, 助教授 (60285913)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増田 道明 獨協医科大学, 医学部, 教授 (80199702)
|
Keywords | ギラン・バレー症候群 / Campylobacter jejuni / リポオリゴ糖 / 分子相同性 |
Research Abstract |
Campylobacter jejuni腸炎患者の千人に一人がギラン・バレー症候群(GBS)を続発するが、GBS発症の規定因子は不明である。本邦では腸炎患者由来株と比べGBS由来株は血清型HS:19の頻度が高いと報告されている。しかし、欧米諸国では同様の傾向は確認されていない。本菌感染後GBSの発症に、菌体リポオリゴ糖(LOS)上に存在するガングリオシド様構造が重要と考えられることから、その生合成に関わる酵素遺伝子座の解析がオランダ、ベルギーのGBS由来株を用いて行われ、GBS由来株はクラスA遺伝子座を有する頻度が高いことが報告された。今回、同様の傾向が本邦でもみられるかを検討し、さらにGBS発症の細菌側危険因子に関して包括的に解析した。 LOS合成酵素遺伝子座は、GBS患者由来株(N=138)の68%がクラスAであり、腸炎株(17%)と比べ高頻度であった(p<0.001)。クラスAの菌株は、GM1とGD1aエピトープの両者を有していることが多く、このような傾向は他のクラスの菌株ではみられなかった。クラスAの菌株の多くはHS:19であり、クラスAの菌株の中でもGBS株では腸炎株と比べHS:19の割合が高く、より高頻度にGM1/GD1aエピトープを発現していた。単変量解析ではGBSの危険因子として、クラスA遺伝子座、HS:19、GM1様LOS、GD1a様LOS、cst-II(Thr51)が検出された。これらを変数としてロジスティック回帰分析を行った結果、HS:19型(オッズ比,16.5;95%信頼区間,4.0-68.8;p<0.001)とクラスA遺伝子座(オッズ比,5.6;95%信頼区間,2.1-15.1;p=0.001>が独立した危険因子として検出された。 今回の検討の結果、欧米と本邦とで共通するGBS発症危険因子としてクラスALOS合成酵素遺伝子座が初めて同定された。クラスA遺伝子座には、ガングリオシド様LOS合成に必要な糖転移酵素の遺伝子が全て含まれている。さらにcst-II(Thr51)型はGM1/GD1aエピトープ合成を促す器質特異性を有し、HS:19型と密接に関連することから、クラスA遺伝子座に加えHS:19型であることで、GM1/GD1a様LOSの合成が促進され、患者血中に抗GM1/GD1a抗体を誘導し、GBS発症のリスクを高めると考えられる。
|
Research Products
(16 results)