2004 Fiscal Year Annual Research Report
胎生・幼年期におけるアルコール・依存性薬物暴露と成長後の神経回路網の変異
Project/Area Number |
16390327
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
齋藤 利和 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50128518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 官司 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30232193)
橋本 恵理 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30301401)
相馬 仁 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (70226702)
山本 恵 札幌医科大学, 医学部, 講師 (90347170)
加藤 忠文 理化学研究所, 脳科学総合研究センター・精神疾患動態研究チーム, チームリーダー (30214381)
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Keywords | エタノール / 胎児性アルコール症候群 / 神経幹細胞 / 神経新生 / 神経栄養因子 / MAP2 / リン酸化Akt / リン酸化Erk |
Research Abstract |
母親のアルコール・依存性薬物摂取による胎生期の暴露と若年期の摂取が,成長後の認知行動異常にどのように結びついているかを神経薬理・生化学的に明らかにしようとする目的で,まず胎生期アルコール摂取モデルを用いて,脳内神経回路網の構築・維持・修復に重大な役割を果たしている神経幹細胞の機能変化について検索した。 妊娠ラットに,5g/kg/dayのエタノールを4日間経口投与した後,その胎仔から神経幹細胞を得た。神経細胞への分化を誘導し,エタノール存在/非存在下での分化能を比較検討した。分化率は,抗MAP-2抗体を用いた免疫染色法を応用したMAP2-ELISAを用いて定量化し比較検討した。神経細胞,神経幹細胞の生存率はMTT法で評価した。さらに,細胞内シグナル分子Akt, ERKのリン酸化活性分子の発現に対するエタノールの影響を,Western blot法を用いて検討した。 胎内でエタノールに暴露されたラット胎仔から得た神経幹細胞は,対象群に比べて分化能が劣っていた。エタノールは,神経細胞,神経幹細胞の生存に影響をおよぼす濃度よりもかなり低い濃度から神経幹細胞の分化を抑制した。エタノールはp-Akt, p-ERKの発現を時間依存的に減弱した。 今回,妊娠母体の過度のアルコール摂取が,胎仔脳内の神経幹細胞に影響を及ぼす可能性が示唆された。エタノールによる神経細胞の減少は,神経細胞死のみならず,分化抑制による新生神経細胞の減少も関与しているものと思われた。エタノールによる神経幹細胞の機能抑制の作用部位として,栄養因子シグナルに関連する細胞内分子が考えられた。胎児性アルコール症候群(FAS)の病態基盤に神経幹細胞の機能異常が関与している可能性が疑われた。
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Research Products
(6 results)