2004 Fiscal Year Annual Research Report
VHL遺伝子・ペプチドによる組識幹細胞・ES細胞の神経分化誘導と再生医療への応用
Project/Area Number |
16390415
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
菅野 洋 横浜市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (40244496)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長嶋 洋治 横浜市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (10217995)
山本 勇夫 横浜市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (30158266)
出澤 真理 京都大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (50272323)
杉本 直己 甲南大学, 理工学部, 教授 (60206430)
中野 修一 甲南大学, ハイテクリサーチセンター, 講師 (70340908)
|
Keywords | 神経幹細胞 / von Hipple-Lindau遺伝子 / 神経分化 / パーキンソン病 |
Research Abstract |
神経幹細胞は、米国のソーク研究所のGageらにより成体脳にもその存在が明らかにされて中枢神経系の可塑性に関与していることが示唆され、神経再生医療における移植のドナーとして期待されているが、そのまま移植しても大部分がグリアへ分化して数%以下しかニューロンに分化せず、脳内で機能的なニューロナルネットワークを形成しない。この問題に対する解決法として、腫瘍抑制遺伝子の一種であるvon Hipple-Lindau(VHL)遺伝子を神経幹細胞へ導入し、その細胞を脳内へ移植することにより、極めて高率な生着率と機能的ニューロンへ分化誘導が可能なことを示してきた。これまでVHL遺伝子・蛋白の発現に関して中枢神経系ではニューロンに認められるもののその神経系における機能は不明であったが、神経幹細胞からニューロンに至る過程においてVHL蛋白がどのように発現するかを検討すると、神経幹細胞からグリアではなくニューロンへ分化する際にのみ発現が認められること、VHL遺伝子を導入すると神経幹細胞からニューロンへ急速に分化が進むこと、さらにこの現象はVHL遺伝子のアンチセンスや変異VHL遺伝子導入で阻害されることから、VHL遺伝子がNeuorogeninなどのプロニューラル遺伝子と同様の機能を有するユニークな腫瘍抑制遺伝子であることが判明した。また、VHL遺伝子を導入した神経幹細胞の電気生理学的機能をパッチクランプ法で調べると成熟ニューロンと同等の高いNa-K電流を認めた。こうしたVHL遺伝子の神経分化誘導がほかの細胞においてもみられるか、神経芽腫細胞へVHL遺伝子を導入したところ神経分化誘導が確認された。さらに、VHL遺伝子導入神経幹細胞のin vivoにおける機能を調べるために、6-hydroxydopamineを定位的に注入して作成したパーキンソン病モデルラットの線条体へVHL遺伝子導入神経幹細胞を移植すると、脳内で約60%の細胞が生着してニューロンへ分化しており、そのうち約半数がTH陽性のドーパミンニューロンであった。また、行動解析にてapomorphine誘発回転を検討すると回転数の激減を認めたが、これに対し、VHL遺伝子を導入しない神経幹細胞を移植してもほとんどグリアへ分化してニューロンへの分化を認めず、行動解祈にてもapomorphine誘発回転数の減少を呈さなかった。同様にVHL遺伝子導入神経幹死亡を移植した中大脳動派閉塞の脳梗塞モデルラットや脊髄損傷モデルラットにおいても行動解析に改善がみられ、移植した多数の細胞が高率にニューロンへ分化していた。VHL遺伝子の神経幹細胞への導入によってニューロンへ分化する分子メカニズムに関しては、VHL遺伝子導入によって神経幹細胞にユビキチン化がみられ、同時にNotchの発現の低下およびVHLとNotchの結合が見られることから、Notchのユビキチン化とそれに続くプロテアソームによる分解によって神経分化が惹起されていることが示唆されるが、まだ完全には解明されていない。VHL遺伝子を導入した神経幹細胞は、パーキンソン病などの神経難病移植のドナーとして極めて有望と考えられるが、その後、皮膚幹細胞、骨髄間質細胞もドナー細胞候補になりうること、またVHL遺伝子導入ではなくVHLペプチド導入も可能であることも判明した。
|
Research Products
(5 results)