2005 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄損傷による瘢痕形成の制御を目指したターゲット分子特定への網羅的アプローチ
Project/Area Number |
16390433
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Research Institution | Research Institute, National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
山本 真一 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所, 運動機能系障害研究部, 主任研究官 (30282560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 栄 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50282661)
星地 亜都司 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70236066)
中村 耕三 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60126133)
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Keywords | 脊髄損傷 / オリゴデンドロサイト / 前駆細胞 / 初代培養 / 分化制御 / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
昨年度確立したマウス由来オリゴデンドロサイト初代培養系を用い、中枢神経の修復過程で重要な役割を担うオリゴデンドロサイトの解析を進めた。まず、オリゴデンドロサイト前駆細胞に対しPDGF,FGF2の増殖因子を添加し、分化に対する影響を検討した。さらに増殖因子によって活性化される細胞内シグナルを阻害剤によって選択的に遮断し、その影響を分化マーカー(MAG,PLP)の発現変化を通じて検討した。その結果、増殖因子によって活性化される細胞内シグナルのひとつであるMAPキナーゼ経路が分化に対して抑制的に働くことが明らかとなった。一方で、同じく増殖因子によって活性化されるPI3キナーゼ経路の活性化は分化に必要であることがわかった。 MAPキナーゼはこれまで増殖を促進するシグナル経路として知られてきたが、オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化を抑制するメカニズムは明らかではない。損傷脊髄内でオリゴデンドロサイトの分化を制御する上で、このメカニズムの解明は重要であるためMAPキナーゼ経路に関連する分子の機能を遺伝子導入によって検討した。 オリゴデンドロサイト前駆細胞に対する通常の発現プラズミドによる遺伝子導入効率は極めて低いため、レトロウィルスベクターによる導入を行なった。MAPキナーゼ関連分子として、増殖に関与することが知られているサイクリンD1に着目し、その遺伝子を組み込んだレトロウィルスベクターを作成しオリゴデンドロサイト前駆細胞に遺伝子導入した。分化マーカーのメッセンジャーRNAレベルを測定したところ、サイクリンD1を強制発現したオリゴデンドロサイト前駆細胞はコントロールの細胞に比べ発現が低下していることが明らかとなった。この知見は増殖を制御する分子が同時に分化も制御するというメカニズムを示唆している。今後サイクリンD1による分化制御メカニズムの解明進めて行く予定である。
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