2005 Fiscal Year Annual Research Report
感染侵襲時の酸素代謝異常・臓器不全発症機転解明とその治療に関する研究
Project/Area Number |
16390515
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鍬方 安行 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (50273678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 裕司 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (70301265)
田中 裕 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (90252676)
杉本 壽 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90127241)
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Keywords | 酸素運搬量 / 酸素消費量 / 敗血症 / ショック / 人工赤血球 |
Research Abstract |
昨年までの実験成果をふまえ、組織血流のheterogeneityを評価するために、単位面積あたりの組織血流を測定し、その分布のrelative dispersionを評価できる測定系の開発に重点をおいた。従来の研究成果により、IL-1β投与あるいはエンドトキシン(LPS)投与による実験的敗血症では、腸管-門脈系で血流分布異常を生じ、全身性の酸素消費量/運搬量関係の変化を生じると推察される。そこで、New Zealand White rabbitを全身麻酔・調節呼吸下に上腹部横切開で開腹し、門脈肝右葉枝・脾静脈分岐直下の上腸間膜静脈にultrasonic flow probeを設置して持続的に門脈血流をモニターした。門脈肝右葉枝をテフロン針で直接穿刺し、採血ルートとした。回腸の1セグメントを選択して口側・肛側の腸管壁を結紮して壁を介しての結紮部以遠からの血流を遮断した。セグメントを中央で二分し、一方のanti-mesenteric siteの腸管壁を腸軸方向に凝固止血しつつ切開し、粘膜面を外翻した。セグメント長の回腸は、半分を粘膜面、半分を漿膜面として黒色のポリエチレンシートを背景として接着固定し、開腹創に固定した。さらに表面を薄い透明プラスチックシートで覆って、乾燥を防ぎつつ粘膜面・漿膜面を均一表面から透見できるようにした。セグメント長の腸管に焦点をあてて表面ドプラースキャン装置を設置し、回腸粘膜面・漿膜面のpixel by pixelの赤血球量・血流速を定量的に測定できる系を完成した。NZW rabbitにLPS1mg/kgを静脈内投与した。30分後に平均動脈圧・心拍出量とも前値の約65%に減少し、代謝性アシドーシス・高乳酸血症を生じた。平均動脈圧はその後前値の約75%程度で低値のまま推移したが、心拍出量は120分後に前値に復し、以後240分までほぼ前値で推移した。門脈血流は、30分で前値の約70%を示した後、60分で約110%と増加に転じ、90分〜240分で約150%に達した。回腸血流は、30分後に粘膜面約75%、漿膜面約50%、60分後には粘膜面約67%、漿膜面約44%と最低値をとった後徐々に上昇に転じ、180分でほぼ前値に復した。ただし、単位面積あたりの血流のrelative dispersionはLPS投与後一貫して増大し、組織血流のheterogeneityは明らかであった。門脈血の酸素分圧は、30分で低値を、60分以降で前値よりも高値を示した。個体の酸素消費量/運搬量関係では、LPS投与群は、正常対照群に比して、LPS投与120分以降において酸素運搬量が十分に確保されている領域(個体酸素摂取率の限界値に達していない領域)で、酸素運搬量依存性に酸素消費量が減少した。以上の結果から、LPS投与による実験的敗血症では、腸管血流にheterogeneityを生じでおり、これが一因となって個体酸素代謝に異常をきたしている可能性がある。平成18年度には、個体酸素運搬量の減少が腸管血流分布に与える影響を明らかにするとともに、人工赤血球投与の治療効果を明らかにする。
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Research Products
(1 results)