Research Abstract |
提出した計画書に基づいて実験を実施し,本年度は以下のような成果が得られた。 1.一液性ワンステップ接着システムの適用による根面被覆と脱灰抑制効果の検討 ヒト抜去歯の歯根面に一液性のワンステップ型セルフエッチング接着システムを適用し,走査型電子顕微鏡を用いて根面の被覆状態と接着界面の形態観察を行った。その結果,歯根表面を被覆するレジンの厚み,およびセメント質とレジンのhybridized layerの厚みとも,二液性の接着システムに比較して薄いことが分かった。また,酢酸緩衝液を用いた脱灰試験では,一液性ワンステップ接着システム適用試料の80%に病変が認められ,脱灰抑制の点で本材料はあまり有効ではないことが明らかとなった。 2.接着システムのセメント質への接着強さの測定 まず,セメント質を被着体とした接着試験方法の確立を目的に,試験条件についての詳細な検討を行った。これにより,申請設備備品として購入した小型卓上試験機を用いて,接着面積を1mm^2に規定したダンベル型試料で微小引張り接着試験を行うことにより,セメント質へのレジンの接着強さの測定が可能であることが分かった。 3.新規のレジン系根面コート材の試作 根面の被覆を目的とした新規のコート材を開発すべく,市販抗菌性プライマー(Clearfil Protect Bond primer)と数種のレジンの組み合わせを考案し,その硬化性の評価を行った。その結果,MMA系レジンを組み合わせたものが十分な硬化を示すことが分かり,根面への適用に適していることが確認された。 これらの成果をもとに,現在,試作根面コート材の物性の評価,および市販接着システムとのセメント質接着性の比較を開始している。また,レジンによる根面被覆の長期耐久性を評価するための実験方法について,その確定を試みているところである。
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