2005 Fiscal Year Annual Research Report
テルグ語に関する現地調査とそれに基づく教育用文法書・語彙集の作成
Project/Area Number |
16401009
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
山田 桂子 茨城大学, 人文学部, 助教授 (30344831)
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Keywords | インド:マレーシア:シンガポール / テルグ語 / ドラヴィダ諸語 / アーンドラ / 外国語教育 |
Research Abstract |
本年度は、作成中の初級文法書の第1課から第10課まで、会話文・例文・表記について、現地インドでネイティヴ・スピーカーに聞き取りを行い、原稿に必要な修正を施した。その結果、10課まではほぼ完成した。そして第11課以降について、例文の選定のために日常単語とその用法について聞き取り調査を行った。また、子どもが用いるテルグ語学習の教科書、第2言語として学ぶための(母語としない人々のための)教科書、および家庭で両親が子どもに教える際に用いる教材等を収集した。さらに、テルグ人はもっとも多く移民したと目されるマレーシア・シンガポールにおいて、彼らの言語状況について調査すると同時に、使用されている教材や授業等について聞き取りを行った。 以上の結果得られた新しい見地は次の3点である。第1に、インドにおいて識字のあるネイティヴ・スピーカーのテルグ語は伝統社会では日常的な語彙が急速に失われ、テルグ語化した英単語によってとって代わられつつある。このことは、特に11課以降の例文と基礎単語の選定の際に、何を「基礎的」と考えるかについて、これまでの方針に大きな変更を迫ることになった。第2に、移民社会では通常本国よりも母語教育に熱心な親たちによって、より合理的な語学学習が行われるとの予想であったが、現実にはマレーシア・シンガポールではより大きなインド人コミュニティの言語でかつ隣接言語でもあるタミル語に多大な影響を受けており、彼らの複雑な言語状況は予想外のものであった。彼らの間のテルグ語教育は本国と同じ教材を用いるもので、特別な教授法はまだ模索中であり、かつテルグ語の識字率は低下しつつあることが分かった。第3に、昨年度の調査で課題として残った動詞の分類については、言語学者の知識提供によって新たな分類を考案した。来年度中に試論を発表予定である。 最後に、本研究の一環としてテルグ語話者の歴史的な言語アイデンティティについて小論を完成し出版社に完成原稿を送ったが(山川出版社『南アジア史』第3巻収録予定)、本年度の成果としては間に合わなかった。
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