2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16402026
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小井土 彰宏 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (60250396)
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Keywords | 移民政策 / アメリカ合衆国 / 非合法移民 / 国境 |
Research Abstract |
平成17年度は、連邦の移民担当官庁、地方自治体、移民団体や移民支援団体に聞き取りを実施し、移民政策の背景にある論理と、それの与える影響の各地方での多様性を分析した。第一に、本土安全保障省(Department of Homeland Security)の本庁および地方出先機関での調査では、従来の移民帰化局(INS)とは異なり、移民にサービスを提供する部門と非正規入国・滞在を取り締まる部門に機能分化した結果、取締りの自己目的化が進行することが発見され、組織形態が政策執行に影響を色濃く与えていることがわかってきた。第二に、地域の自治体および移民関係団体との調査では、このような規制強化の方向が、地域レベルで一様に観察されるのではないことが明らかになった。まず、ニューヨーク市では、一方でテロ攻撃の中心として、大きな注目を浴び、事件直後には移民集団に対しての徹底した取締りが実行されながら、その後は市の政治・行政機構が様々な移民自体の影響力の下、一面的な規制を修正させ、移民監視と地方警察の間の再分離などの政策が打ち出されてきている。これに対し、その周辺の郊外地域においては、一方で閑静な住宅地域における住宅ブームの結果としての建設等の日雇い労働者の急増への反発で地域レベルでの取締りが実行される例や、逆に地域の要望とは別に連邦の出先機関が実績づくりのために取り締まりを強化する地域など、コミュニティレベルでの差が明確になった。さらに、新たな移民集中地域であるアイオワ州などでの聞き取りでは、地域の精肉加工業者らの利害により、むしろ2001年以降労働現場においてはほとんど規制らしい規制が行われていない実態が浮かび上がってきた。このような地域の政治・権力構造、利害団体・エスニック団体の編成が多様な移民への対応に与える影響を、とくに雇用関係・労働市場の水準で分析することが平成18年度の調査課題となる。
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