2004 Fiscal Year Annual Research Report
旧ソ連諸国におけるインテグレーションの展開とその多面的影響
Project/Area Number |
16402047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山村 理人 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (60201844)
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Keywords | インテグレーション / 垂直統合 / ロシア / カザフスタン / 農業 / 穀物 / 土地所有 / 移行経済 |
Research Abstract |
平成16年12月から平成17年3月にかけて、3回にわたって、ロシア、カザフスタン、ベラルーシの3カ国で、予備的調査と資料収集を行った。 予備的調査の段階ではあるが、各国における農業の垂直的統合の全般的傾向と性格の違いを把握した。いずれも、旧来の集団化農業を継承した農業法人、農村の社会集団がそのまま統合過程の中に取り込まれるという特異性がある点で市場経済諸国と違っている。このうちロシアにおけるインテグレーションは、垂直的統合、水平的統合、コングロマリット的統合の3つの要素が混在し、重なりあう複雑なプロセスである。垂直的統合に関しては、アメリカなどの西側市場経済諸国で1950年代以来見られるようになった垂直統合の現象とも類似しているが、それは、「所有型の垂直統合」が優勢であるなど、通常見られない多くの特徴を持ち、移行経済下の特殊な条件によって規定された固有の性格を帯びている。カザフスタンでは、インテグレーションは主として、穀物分野に限定されているが、より純粋な垂直的統合の形をとり、インテグレーションの進展度はロシアよりも上である。カザフスタンの場合、インテグレーションの主動力は市場メカニズムであるが、ロシアでは地域行政体の影響力が働いており、純粋の市場的現象と言えない。ベラルーシの場合は、さらに、行政主導の色彩が濃厚である。 また、インテグレーションに伴い、ロシアやカザフスタンの農村では所有の大きな再編成が起き、投資家の手に土地と資産が集中する一方、農民は、資産と土地に対する権利を失って「無産労働者」に転化しつつある。しかし、それは一方で、農業に新たな投資を呼び込み、機械や設備の更新を可能にし、「農業の近代化」と再生を助けるプロセスにもなっている。ベラルーシにおける統合プロセスにはこのような変化が伴っていない。
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