2005 Fiscal Year Annual Research Report
旧ソ連諸国における農業インテグレーションの展開とその多面的影響
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16402047
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山村 理人 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (60201844)
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Keywords | インテグレーション / 垂直統合 / ロシア / カザフスタン / 農業 / 穀物 / 土地所有 / 移行経済 |
Research Abstract |
平成16年12月から平成17年3月にかけて3回にわたって調査と情報収集を行った。穀物、植物油(向日葵)、砂糖(甜菜)、鶏肉、豚肉という5つの分野でこの数年間、垂直型統合が進行していることが確認され、それぞれの分野についての状況と統合を規定する諸条件を調査・分析を行った。 穀物と向日葵の二つの作物は、ロシア(およびウクライナ、穀物についてはカザフスタン)の農業分野で唯一国際競争力があり、最も収益性の高いものとして、最も早い時期(1990年代末)から垂直統合が始まっていた。これに伴い外国製のコンバイン、トラクターなどの新規機械の購入という投資活動が活発化し、燃料・肥料などの生産資材の投入も行われるようになった。統合が進む前は、機械や投入財購入のための資金が供給されるメカニズムが殆ど欠如していたが、統合により、銀行からの融資がインテグレーターを通じて農業になされるようになったことが、こうした投資活動の活発化を可能にしている。また、インテグレーターによって農法的な技術革新も進むようになり、特に向日葵生産では数年で土地生産性が著しく高まっている。 一方、砂糖(甜菜)、鶏肉、豚肉の3つの商品については、従来から原料農産物の輸入依存度の高い分野であり、特に1990年代に加工産業で国内産原料から輸入原料が進んだ部門という意味で穀物・向日葵とは事情が全く異なる。これらの分野で統合が進む大きなきっかけになったのは、この数年で行われた新たな国境措置の導入、特に関税割当制の導入である。これにより、加工用原料の不足や価格の高騰が起き、加工産業が原料のかなりの部分を国内産へ再び切り替える傾向が顕著となり、加工原料企業を中心としたインテグレーターによる垂直統合の動きが強まった。 ロシアなど調査対象国は現在、WTO加盟交渉中であり、WTO加盟が近々実現しようとしているが、今後数年にわたって現在の国境措置は維持される見込みとなっている。そのため、今後もしばらくの間はインテグレーターによる原料農産物部門への投資が進むと考えられる。
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