2006 Fiscal Year Annual Research Report
旧ソ連諸国における農業インテグレーションの展開とその多面的影響
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16402047
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山村 理人 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (60201844)
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Keywords | インテグレーション / 垂直統合 / ロシア / カザフスタン / 農業 / 穀物 / 土地所有 / 移行経済 |
Research Abstract |
平成18年12月、平成19年3月の2回にわたってロシア、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシの4カ国において調査と情報収集を行った。 今年度は、穀物、植物油(向日葵)、砂糖(甜菜)、鶏肉、豚肉、乳製品という検討対象となった分野における垂直統合およびその他の垂直的調整の諸形態の発展を規定する諸要因の各国における比較分析を行うことを課題とした。 特に、(1)1990年代末から各国において、これらの分野で次第に強まった貿易上の保護政策(関税率の引き上げ、関税割当制度の導入、非関税障壁の強化など)や国内助成措置の影響、(2)構造政策(特に農業企業に対する政策)や土地政策の与えている影響を調査し、比較を行った。 調査対象国の中で、ロシアにおける植物油、砂糖、鶏肉、豚肉、ウクライナにおける植物油、砂糖といった分野での垂直統合は、これらの分野における直接的・間接的貿易保護措置、国内助成措置によって促進されたものであり、こうした措置抜きには当該分野への投資も進まず統合も進行しなかったであろうことが明らかにされた。 1990年代後半以来、これらの4カ国はWTO加盟交渉中であり、農産物貿易政策や国内助成にも変更を迫られることになっているが、分野別に検討したところ、中期的には貿易政策面、国内助成の面では、今後、農業・食料複合体における統合プロセスに歯止めをかけるような大きな変化が生じないであろうことが明らかにされた。 構造政策の面では、ロシアとカザフスタンの2カ国(農業・食料複合体における垂直統合が活発な国)とウクライナ、ベラルーシ(垂直統合の進展が顕著でない国)の差を規定する大きな要因が経営不振の農業企業の存続に関連する諸政策の違いであることが明らかにされた。そして、今後の構造政策の展開しだいによって、ウクライナやベラルーシの農業・食料分野においても垂直統合プロセスが活発化する条件があることが示された。
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