Research Abstract |
宇宙線超高エネルギー現象解明のため,CERN-LHCの衝突で発生する最前方粒子の(ガンマ線,中性子)の測定用カロリメータを開発する.タングステン・カロリメータをCERN-LHCの想定される実験環境に適合する形で制作し,CERN-SPSの電子,ミューオン,陽子ビームを用いて2004年7,8月に性能テストを行なった.あらかじめ行ったシミュレーションによる予想に近い良好な結果が得られ,本実験に向け準備が一歩前進した.タングステンは断面2cmx2cmと4cmx4cm,長さ54輻射長(rl)の2つのタワーを用意した.32rlまでは約2rlおきにそれ以降は4rlおきに3mmのプラスチック・シンチレータを挿入した.また,4,6,32rlには1mm角のシンチレーティング・ファイバーからなるベルトを挿入し,マルチアノード光電子増倍管(MAPMT)で受ける事により,内部で発生するシャワーの中心を求めるのに使用した.今回の試作器のテストの目的は,1)MAPMTでのデータ取得システムの検証,2)2cmx2cmのような常識を破る小面積のカロリメータで充分な精度のエネルギー決定ができること,3)特に,カロリメータのすみから2mm以内に入射したシャワーについては、もれの補正を行う事により,中心付近に入射したシャワーと同程度の精度がだせること,4)補正関数がエネルギーに依らないこと,5)陽子と電子の区別がほぼ100%のレベルでできること,の検証である.テスト実験では150GeVミューオンを一様にタワーに入射させ,1粒子の基準とし,位置に依る依存性などを明らかにした.次に電子50,100,150,200,250GeV,陽子200,350GeVを照射し,各タワーについてエネルギー分解能,e/p分離などを解析中である.予備的な結果では,2cmx2cmタワーについて中心付近で5%(at 200GeV)を上回るエネルギー分解能を示し,シミュレーションで求めた補正関数でよく補正できることが示された.現在シンチ・PMT系のリニアリティーをレーザ光を使って調査中で,これによりさらにシミュレーションと実験の一致はよくなると考えられる.
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