2004 Fiscal Year Annual Research Report
分子・生態情報に基づく東南・東アジアにおけるハダニ類の分布拡大プロセスの解析
Project/Area Number |
16405022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高藤 晃雄 京都大学, 農学研究科, 教授 (50026598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日本 典秀 農業生物資源研究所, 昆虫適応遺伝グループ, 主任研究官 (80370675)
後藤 哲雄 茨城大学, 農学部, 教授 (60178449)
天野 洋 千葉大学, 園芸学部, 教授 (00143264)
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Keywords | ハダニ / ナミハダニ / カンザワハダニ / DNA / 休眠性 / アジア / 地理的変異 |
Research Abstract |
主としてナミハダニとカンザワハダニの日本、台湾、ベトナム、インドネシア、タイなどの個体群について、発生生態と休眠性を調べ、またCOI遺伝子の塩基配列を比較した。 1)カンザワハダニについては、日本の個体群では鹿児島以北のものはほぼ完全な休眠性であったが、沖縄諸島の個体群は休眠性が極めて低かった。台湾の個体群は休眠性の変異に富み、また沖縄よりも南に位置するにもかかわらず、休眠性は沖縄個体群よりも高かった。タイの個体群は北部産でも休眠性が極めて低かった。ベトナム個体群は温度による休眠発現への効果が大きく、休眠性の強さは日本や台湾と、タイとの中間に位置した。一方、ジャワ島の個体群は熱帯産であるにもかかわらず、休眠性が高かった。これまでの結果から、カンザワハダニの休眠性は必ずしも緯度が低くなるにっれて低くなるとは限らず、東南アジアの個体群はさまざまな地域由来の侵入個体群から成り立ち、休眠性に自然選択が働かずに、侵入元の休眠性が維持されていることが示唆された。 2)一方、カンザワハダニのCOI遺伝子配列については、地理的距離と遺伝的距離の相関は検出されず、地理的変異の指標として本遺伝子を用いることが適当かどうか検討する必要がある。ただ、これまでの結果から類推して本種の起源は東南アジアではないことが予想された。 3)ナミハダニについては、南日本・台湾から東南アジアにかけていずれも休眠性が極めて低く、同様の休眠性をもつことが明らかとなった。 4)ナミハダニのCOI遺伝子配列はいずれの地域でもほぼ同じであり、すべて一つのクレードにまとまり、日本などから一気にアジア全域にかけて短期間に分布が拡大したと考えられた。
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