2006 Fiscal Year Annual Research Report
中枢神経系に病原性を示すトリレトロウイルスの分子系統進化
Project/Area Number |
16405033
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
落合 謙爾 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 助教授 (80214162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 和彦 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 助教授 (90250498)
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Keywords | トリ / グリオーマ / 中枢神経系腫瘍 / 分子系統進化 / レトロウイルス / トリ白血病ウイルス |
Research Abstract |
「トリのグリオーマso-called fowl glioma」はその原因と病態が不明であった疾患である。研究代表者らは本疾患の国内初発例を発見し,本疾患がA型トリ白血病ウイルス(ALV-A)感染症であることを明らかにした。本研究課題の目的はトリのグリオーマ原因ウイルス(FGV)のゲノム系統進化と本ウイルス出現の経緯を明らかにすることである。今年度は国内およびフィリピンの鶏から得た材料について解析を行った。1)2003年からわが国で採卵鶏の頭部に間葉系皮下腫瘍を誘発するALV-A感染症が発生している。これら罹患鶏にグリオーマが併発したが,Nested PCRでは罹患脳からFGVゲノムは検出されなかった。そこで,罹患脳から分離したALV7株のenv SU領域のシークエンス解析を行ったところ,これら7株は互いに高い相同性(99〜100%)を示し,既知のALVと比較すると骨髄芽球症関連ウイルス(MAV-1)の同領域との相同性が最も高かった(97〜98%)。分子系統樹では分離したALVとMAV-1は同じカテゴリーに属したが,FGVとは異なるカテゴリーに属していた。以上の成績から,採卵鶏のグリオーマはMAV-1近縁株を原因とし,このウイルスは中枢神経系に病原性を有することが推察された。また,この成績からグリオーマ誘発能を持つALVはFGVだけではなく複数存在することが推察された。2)沖縄で飼育されている鶏計35羽の羽髄をPCRで検索したところ,在来鶏3羽と日本鶏1羽がFGVに感染していた。3)フィリピンの在来鶏34羽についてPCRによりFGVの検出を試みたところ,FGV陽性の鶏が1羽見つかった。現在,2〜3)のALVsについてゲノム解析を行っている。
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