2004 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯および亜寒帯の湿地における土壌からの硫酸流出機構の解析とその対策
Project/Area Number |
16405039
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
原口 昭 北九州市立大学, 教授 (50271630)
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Keywords | パイライト / 泥炭 / 褐炭 / 酸性硫酸塩土壌 / 東南アジア / ドイツ / 河川水質 / 植物系化石資源 |
Research Abstract |
パイライト(黄鉄鉱)は、塩湿地や沿岸海域の底質中で生成する鉱物で、沿岸域の堆積物や泥炭、褐炭などの植物系化石資源の層間に含まれている。パイライトは、還元環境下では安定な化合物であるが、褐炭や石炭の採掘などで大気に触れる状態になると急速に酸化が進み、硫酸の生成により強酸性の酸性硫酸塩土壌が生ずる。これは、全世界的に発生している土壌環境問題であり、早急な対策が必要であると広く認識されている。 インドネシア中央カリマンタンの熱帯泥炭湿地では、沿岸地域の泥炭地の農地開発に伴い、広範囲にわたって酸性硫酸塩土壌が見られるが、これは、単に土壌の酸性化に伴う生産性の低下を引き起こすのみならず、土壌からの硫酸流出は河川環境に影響をおよぼし、広域的な硫酸汚染問題の原因となっている。本研究では、このような硫酸汚染の実態を正確に把握することを目的とした河川環境の解析を行った。その結果、パイライト由来の硫酸に起因する河川環境の汚染は、河口から130-170km上流まで認められ、硫酸汚染土壌の分布域よりはるかに広範囲に渡っていることが判明した。さらに、土壌からの硫酸流出は、乾季より雨季に著しく、河川水量が増す雨季における河川水中の硫酸濃度が乾季より高まることがわかった。また、土壌から河川への硫酸の移動は、人工的な水路・運河を経由して輸送されることがわかった。 さらに、ドイツ東部ラウジッツ丘陵の褐炭採掘跡地からの硫酸流出について、河川水質を測定することにより評価した。その結果、採掘跡地からの硫酸流出の影響は、下流に向かうに従って低下するものの、100km下流のベルリン周辺でも影響が残っていることが判明した。 研究手法は、熱帯地域と冷温帯地域で共通に起こっている、パイライト起源の硫酸汚染の実態把握に有効であることが確認された。
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