Research Abstract |
本研究では,使いやすいペンの開発を行うことを目的とし,筆圧を汎用的に計測できるシステムを使用し,筋電図による疲労の評価法として,僧帽筋を対象とした筋電図の振幅,周波数特性,手首と肘の角度などのバイオメカニックス的な指標の関連も十分に考慮した実験を行った。ペン形状のみではなく,ペンの芯の太さ,年齢差などを考慮に入れた実験を実施した。 セーラー万年筆との共同,さらには広島市工業技術センターの協力を得て,ペンのプロトタイプを製作した。協力者の助言をえながら,芯の太さを3条件,ペン先長を3条件,グリップ径を3条件ほど,慎重に選定し,プロトタイプを作り上げ,これを用いて筆記動作時の僧坊筋の筋電図を計測した。筋電図による筆記時の筋への負担や疲労の評価法を,これまでの研究成果を有効利用しながら確立した。また,ペンの使いやすさに関する感性(心理)評価手法を,統計処理手法に基づいて作成した。本年度は,短時間(約2分)作業時の評価を実施した。 その結果,若年者に関しては,グリップ径,ペン先長が筋負担に及ぼす影響はほとんど認められなかった。また,芯が太いペンでは筋負担が小さくなる傾向が明らかになった。一方,高齢者に関しては,芯が太い条件,グリップ径が大きい条件,ペン先長が短い条件で筋負担が小さくなる傾向が明らかになった。 最終年度においては,筆圧と同時に,筆記時の手首関節角度,肘関節角度のデータを収集し,さらには被験者数を増やして(本年度は若年者,高齢者ともに5名ずつであった),筆記時の動作学的な特徴分類を行い,筆圧条件と筆記時の動作学的な特徴からこれらの被験者を分類できるようにする必要がある。また,長時間の筆記時の負担も明らかにしていく予定である。
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