Research Abstract |
現在,持ちやすさや疲れにくさを商品価値とした種々のペンが市販されている。しかし,これらのペンの使いやすさや疲れにくさの根拠はあいまいなものがほとんどである。このような現状に対して,本研究では,高齢者と若年者の2グループに対して,筋電図解析による客観評価と感性評価の両側面から,ペンの形状特にペン径とペン先長が使いやすさや疲れにくさに及ぼす影響を明らかにした。また,開発したペン圧計測システムを用いて,筆圧の高いグループと低いグループで,いかなる違いがあるかも検討した。最初の実験では,8文字の短文を筆記する際の筋負担と感性評価を実施した。ここでの実験要因は,年齢,ペン径,ペン先長とした。いずれの被験者に関しても,ペンを持つ位置を一定にして,ペン先長を適切にコントロールした。筋負担の評価では,EMG計測データから%MVC(Maximum Voluntary Contraction),RMS(Root Mean Square)を求め,これらを評価指標として用いた。第2番目の実験では,10分間でできるだけ多くの文章を筆記する作業を被験者に課した。ここでの実験要因は,ペン先長を最初の実験で最も評価が高かった14mmに固定し,年齢とペン径を実験要因とした。その結果,同一の使用条件であっても,若年者よりも高齢者のほうが筋負担が高いことが明らかになった。また,ペン先長12mmの筋負担が高く,ペン先長14mmの筋負担が小さくなる傾向が観察された。ペン径に関しては,筋電図の評価指標に有意な差が認められなかったが,感性評価では11mmのペン径が最も使いやすいという結果が得られた(13.8mmの径が使いやすいと考えられているが,これを肯定するデータは得られなかった)。筆圧の高・低は,評価指標に影響を及ぼさなかった。以上のことを総合して,若年者,高齢者ともにペン先長14mm,ペン径11mmの条件が最も望ましかった。また,高齢者の筋負担をさらに軽減でき,ユニバーサルに受け入れられるペンの開発が,今後の課題として明確になった。
|