Research Abstract |
健聴者と聴覚障害者が共に音楽を楽しむことができるようなシステム構築のための基礎実験として,(1)感情を込めたドラム演奏の認識についての聴取実験,および,(2)感情を込めた図形描画とその認識についての実験を昨年度実施し,成果を国際会議で発表した. 計画しているシステムでは,マルチメディアを用いた感情認識を行う予定であるため,(1)と(2)の実験をもとに,"悲しみ","喜び","怒り","恐れ"の4感情のいずれかを意図したドラム演奏と静止画像を用いてメディアの組み合わせによる新しい実験を計画し実施した.刺激タイプとして,(a)ドラム演奏のみ(b)静止画像とドラム演奏(c)動画像(タイプ1)とドラム演奏(d)動画像(タイプ2)とドラム演奏の4種類を被験者に提示し,どの刺激が感情認識には有用であるかを知ることがこの実験の目的である.実験により,(A)健聴者と聴覚障害者の認識に有意差はない,(B)いずれの刺激においても恐れの認識が最も悪い,(C)4刺激中,健聴者でも聴覚障害者でも,(b)静止画像とドラム演奏を用いたものがもっとも認識が良い,という結果を得た.一方で,この刺激では被験者は2種類のメディアに異なる感情を認識していることも指摘されている.それにも関わらず静止画とドラム演奏を用いると最高の認識率が得られるのは,静止画像の認識に拠るところが大きいのではないかと想像される.この実験の結果についても国際会議において発表した. 複数メディアを用いた感情の聴き取りや読み取り実験が,健聴者と聴覚障害者との比較として行われたことはなく,今後,様々なアプリケーションへのユーザインタフェースの設計のよりどころとして活用されることが期待できる.
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