2004 Fiscal Year Annual Research Report
ネットワーク環境における図書館の存在意義と社会的機能の理論化
Project/Area Number |
16500156
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
戸田 愼一 東洋大学, 社会学部, 教授 (10183493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
影浦 峡 国立情報学研究所, 人間・社会情報研究系, 助教授 (00211152)
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Keywords | 図書館 / 印刷メディア / ネットワーク・メディア / 数理モデル |
Research Abstract |
本年度は、基本的に当初研究予定に従い、(1)印刷メディアと近代図書館の存立要件に関しての文献調査に基づく整理とモデル構築、及び(2)非印刷メディアの出現と図書館の変容について研究を進めた。 印刷メディアと近代図書館の存立要件に関しては、文献調査に基づき、西洋における活版印刷誕生後の本と書物世界の変容を、絶対的な点数の増加と部数の増加という集合としての性質と、物理単位と内容単位の不可分性、表象と表示の不可分性、可搬性、ランダム探索性、操作の身体性という個物としての性質とから整理し(影浦『本:世界をポケットに入れて』、集合に対しての本の世界が形作る数量的モデルを確認した(影浦『いわゆる順位頻度分布と頻度度数分布との関係について』)。また、こうした印刷メディアの整理と、主として均質な単一言語性に対応する国民国家での書記言語への大幅な依拠という近代社会の要件を踏まえ、図書館に関しては、現在盛んに議論されている図書館の変容論を批判的に検討した上で、それらのいくつか、とりわけ効用最適化を目的とする図書館論がそもそも近代社会において近代図書館を生み出した理念に反する概念であることを明らかにした(影浦『図書館:印刷された紙の果てしなき繁茂』)。 非印刷メディアの出現と図書館の変容については、印刷/活字メディア終焉論の読み直しをすすめ、メディアの種別としての印刷/活字メディアの終焉あるいは相対的地位の低下と、印刷/活字メディアが成立させた情報世界・流通の形式の変容との二つを区別する必要があることを明らかにした。調査については、単一言語性の問題をめぐって興味深い状況にあるカタロニア州で、印刷メディアと非印刷メディアとの中での言語の位置づけについて、カタロニア州立図書館を訪問し、また、カタロニア語とカスティリア語で著述を行なっている詩人Anat-AguitAmarに聞き取りを行なった。この観点からは、言語とメディアの形式に関しては、印刷メディアが準備した配分を非印刷メディアが変容しているわけではないことが示唆された。
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Research Products
(7 results)