Research Abstract |
平成16年度の研究の実施計画は,統合失調症を対象とした適切な「心の理論」課題を選択すること,および症状を評価する尺度の検討であった。「心の理論」の課題としては,Frith, Corcoranらの研究を参考に,誤信念課題,スマーティ課題,絵画配列課題,ヒント課題など種々の課題を試行的に数名の統合失調症患者に実施した。誤信念課題は被験者への記憶負荷が大きく,特に第2水準の課題ではその傾向が強かった。これまでスマーティ課題は,「心の理論」を検証する課題として利用されてきたが,今回の予備的試行においては,統合失調患者がある程度他者の信念は理解しながら,自己の経験を抑制できないために失敗に至る可能性が示唆された。また絵画配列課題では,被験者が適切な順に配列できても,それが他者信念の正しい理解に基づくものなのか,他の要因で可能になったのか判別が困難であった。ヒント課題は最近導入された課題であるが,統合失調症患者においては,必ずしも容易な課題ではなかった。今回の予備的研究ではそれぞれの課題の特徴が明らかになった。これらのデータをもとに記憶負荷が少なく,知識の量とはあまり関連のない,しかも他者信念の理解の程度を敏感に反映する課題,あるいは被験者への適切な質問の仕方を検討し,平成17年度の研究につなげる予定である。 症状評価の尺度としては,全般的な症状を評価するためにBPRSを,妄想に関連した症状を評価するために,丹野らの作成した「妄想観念チェックリスト」を使用することにした。数名の被験者に実施したところ,彼らの特徴をよく把握できることがわかったので,本実験においてもこれらの尺度を使用することとした。以上の予備的研究をふまえ,今年度の研究においては,統合失調症妄想群,統合失調症陰性症状群,精神科コントロール群,健常コントロール群を対象に研究を進める予定である。
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