2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16500169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金野 秀敏 筑波大学, 大学院・システム情報工学研究科, 教授 (20134207)
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Keywords | 脳波解析 / 痴呆の早期診断 / 複雑性指標 / 多面的情報の統合 / 多重スケールエントロピー / 記憶効果 / 理論モデル / 空間位相の乱れ |
Research Abstract |
当該補助金でPC1式(UPU MAC G5,50万以下)を購入し、現有EEG実データの揺らぎ特性、ならびに脳波の理論モデルの揺らぎ特性、複雑性指標((a)局所フラクタル次元、(b)局所エントロピー、(c)位相速度)及びその空間依存性を徹底的に解析した。データ整理には短期雇用者を採用し謝金を支払った。脳波解析を用いた痴呆発症リスクの解析に利用可能と思われる情報の収集を国内では高知工科大、東北大、岐阜大にて、国外ではACM SAC2005(SantaFe, NM, USA)にて遂行。本年度は次のような結果が得られている。 (1)(a),(b),(c)の複雑性指標は重なりがあるが別の側面を見ていることを確認した。 (2)指標(a),(b),(c)の多面性を回帰分析すれば、現有EEGデータの範囲では痴呆グループと健常グループはきれいに分別可能であることを確認した。 (3)フィルタをかけてアルファ波だけ抽出したデータでは、(a)の指標では痴呆グループと健常グループの差が出ないが、(b)の指標を用いると明確な違いが出る。また、外来ノイズの重畳に対する感受性が(b)のほうが高く、違いが明瞭に現れることがわかった。 (4)現有EEG実データの位相速度の分布は一般化コーシー分布に従うことを確認した。従来、この数理物理的な根拠は明らかでなく、歪んだ指数分布であてはめてきた。相乗性雑音を含んだ複素ギンスブルグ・ランダウ方程式で、複素係数の非線形項((d)の非線形引き込み現象)があれば位相速度は一般化コーシ分布となることを厳密に導出した。 (5)EEG実データでの現象(d)の存在は、EEGの時間空間変動の位相が時間だけでなく空間の関数としても変動すること、痴呆発症の原因となるシナプス不全が多発している部位ではこの項が空間位相の乱れとなって現れ、重要となる可能性があると推定される。 (6)記憶のある確率調和振動子、確率複素ギンスブルグ・ランダウ方程式、確率フィッツフー・南雲などで多重スケールエントロピーなどの解析を徹底的に行った。その結果、実EEGデータの記憶効果が多重スケールエントロピーに与える影響が明らかにされ、より現実的な脳波モデルを構築する際に利用可能な情報が得られた。
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Research Products
(3 results)