2007 Fiscal Year Annual Research Report
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16500169
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金野 秀敏 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 教授 (20134207)
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Keywords | 脳波 / 痴呆発症リスク / 周波数変調 / 光刺激による引き込み / 非線形高調波応答 / 一般化久保振動子 / 脳機能 / 体性感覚刺激 |
Research Abstract |
(1)安静閉眼時の脳波(EEG)データに関し、痴呆進行に伴う波の多重散乱と有色雑音成分の増加のシナリオの真偽を確かめるために、有色雑音が印加されている場合の数理解析を行った。有色雑音と非線形項の導入により、白色雑音の印加された場合ではあてはめが良好でなかった「重度の痴呆患者の脳波データ群」もこのモデルから得られる確率密度関数(近似解析表現を導出)でよく特徴をとらえることが可能となった。この結果はMMR2007(June,Glasgow)で発表した。上記シナリオを支持する結果として重要である。また、位相速度(周波数揺らぎ)分布のデータから、相乗性雑音と相加性雑音の強度比を推定する方法を考案した。この比率は脳波の多重散乱に伴うコヒーレンスの崩壊を反映しており多変量ロジステイック回帰分析を用いて判別/発症予測をするときの優れたリスク因子となりうる。多重リスク因子を用いたロジステイック回帰を用いる判別・発症予測などの方法論は著書として出版予定(コロナ社、2009年)。 (2)病呆患者の場合光刺激(視覚刺激)下でも引き込みは起こらないことが報告されている。「脳機能の状態をより明確に抽出・把握するには、脳がアイドリング状態にある安静閉眼時よりも、脳が特定の機能を果たしており、主たる活動部位が局在している場合のほうが適切」という考えに立脚する。まずは、健常者の引き込み特性を九州大学医学部の協力を得て測定した(9名の被験者)周期的光刺激下での非線形応答結果を説明できる数理モデルの構築を試みた。詳細検討の結果、ランダムな周波数変調を考慮し、周期的光刺激がパラメータ励振の型で影響する一般化久保振動子が、強い2次や3次の高調波の出現を説明でき、最も実測結果をよく説明できることが明らかになった。9名の被験者の個人差は、モデルに含まれるパラメータを調整することによって再現可能であることも確認できた。高調波の発生はランダムな周波数変調が存在することによる確率共鳴が関係する。痴呆が進むと引き込みが起こらなくなる原因を非線形振動子のパラメータの変化による応答特性の変化(脳媒質の物性変化)として機能同定できる可能性を示唆する。これらの結果は、SPIE FN2007(May,Florence)及びICNF2007(September,Tokyo)などで発表した。 (3)脳機能の特性把握を目指して体性感覚などのMEG(健常者数名)データの非線形応答の解析も継続して行なった。周期的体性感覚刺激下での場合、高調波応答強度は視覚刺激の場合ほど強く現れないが、高調波応答の様相は普遍的であり、脳機能との深い拘わりを示唆している。この結果は、未発表である。
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Research Products
(12 results)