2005 Fiscal Year Annual Research Report
膜タンパク質の精密分子動力学計算のための高速計算法の開発と評価
Project/Area Number |
16500187
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Research Institution | National University Corporation Tottori University |
Principal Investigator |
網崎 孝志 鳥取大学, 医学部, 教授 (20231996)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 伸一 鳥取大学, 医学部, 助手 (00362880)
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Keywords | 分子動力学計算 / 膜タンパク質 / 周期境界条件 / 高速多重極法 |
Research Abstract |
分子動力学(MD ; molecular dynamics)計算は、タンパク質をはじめとする生体分子系の構造と機能の解析のための理論的手法として期待されている。MD計算の最大の問題点は、クーロン力の計算に膨大な時間が必要なことである。そのため、高速多重極法(FMM)や粒子メッシュEwald(PME)などの高速アルゴリズムが用いられるが、生体膜-膜タンパク質などの計算に一般のPMEや周期FMMを用いると、膜の規則的積み重ねに起因するアーチファクトが危惧される。本研究は、当初、この問題を解決するために、セルの階層性を利用する周期FMMを擬二次元周期系へ適用することを目的とした。しかしながら、擬二次元周期系への拡張の以前の問題として、現時点で報告されている三次元周期FMMは、いずれの方式も、圧力制御に必要なビリアルの求値の方法に問題があることが判明した。本年度は、この点を中心に検討した。その結果、これまで見逃されていた多重極展開の格子依存性の寄与を見出し、精密な求値のための定式化に成功した。この寄与は、NaCl結晶などには生じないが、生体分子系では無視できないと思われる。現在、引き続き検証数値実験を行っている。そのほか、周期FMMでは、隣接イメージセルとの粒子-粒子相互作用の計算に多くの時間を要するため、この部分を専用計算ボードの並列クラスタで処理するためのソフトウェアシステムの開発・整備も行った。なお、擬二次元周期系では自由境界とする1軸方向の束縛方法が問題となるが、そのような問題を生じない反作用場型周期FMMも有望と考えている。生体膜のみならず、その他のタンパク質複合体においても、周期境界条件に起因するアーチファクトを排除することは重要であり、今後も、これら二法(特にビリアルの精密求値法)の開発研究を継続する予定である。
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