2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16500196
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坪井 昭夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (20163868)
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Keywords | 神経回路 / 嗅覚系 / 匂い地図 / 嗅覚受容体 / 発現制御 / 発生と再生 / 軸索ガイダンス / トランスジェニックマウス |
Research Abstract |
嗅覚系における初期神経回路の形成は、嗅上皮において、個々の嗅細胞が嗅覚受容体(odorant receptor ; OR)遺伝子群の中から一種類のみを発現すること(one neuron-one receptor)、並びに、嗅球において、同じ種類のORを発現する嗅細胞は、特定の糸球にその軸索を収斂させて投射する(one glomerulus-one receptor)という二つの基本ルールによって支えられている。私はこれ迄、マウス嗅覚系における嗅細胞の一次投射、即ち、嗅球における匂い地図形成の分子機構の解明を目指してきた。嗅覚受容体は分子系統樹において二つのクラスに分類され、一つは水溶性のリガンドを受容する魚類のORと相同性を示すクラスIで、もう一つは、陸生動物に特有なクラスIIである。これ迄の研究により、クラスII ORを発現する嗅細胞の軸索投射位置は、嗅球の背腹軸については、嗅細胞の嗅上皮上における位置、即ち、特定のORを発現する嗅細胞が嗅上皮のどの位置に存在するかによって規定されていることが示された。そこで本研究では、クラスI ORを発現する嗅細胞の嗅上皮における分布及び嗅球への軸索投射について解析した。その結果、クラスI ORを発現する嗅細胞は、全て嗅上皮の最も背内側部(ゾーン1)に一様に、しかし限局して分布し、各々のクラスI ORに関して発現分布に相違のないことが判明した。これは上記したクラスII OR発現細胞の分布様式とは対照的であり、嗅上皮のゾーン1における嗅細胞の位置情報や、ORの相違という"identity"が投射にどう反映されているのか興味深い。一方、クラスI ORを発現する嗅細胞の投射先は嗅球の外側・前部に集中し、Hana3A細胞を用いたリガンド検索から、多くのクラスI ORが脂肪族カルボン酸などに反応することが判明した。以上の結果から、クラスI ORは機能的にも進化的にも、また発現・投射の観点から見ても、クラスII ORとは一線を画した受容体システムであることが示唆された。
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