2005 Fiscal Year Annual Research Report
視床-皮質シナプスでの放出確立の発達変化:臨界期中のサイレントシナプスとの対応
Project/Area Number |
16500199
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 文隆 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (00202044)
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Keywords | 伝達物質放出確率 / 視床-皮質切片標本 / サイレントシナプス / NMDA / AMPA / MK-801 / paired pulse ratio / 臨界期 |
Research Abstract |
視床-皮質シナプスは大脳皮質への感覚情報の入り口として非常に重要であるが、近年このシナプスが、他の皮質細胞からの入力と比べて、高い放出確率を持つことが示唆された。本研究では、主に以下の点を明確にすることを目的として企画された。 1.視床-皮質シナプスにおいての放出確率をMK-801を用いて客観的に評価する。 2.これらの放出確率は生後発達に伴い変化するか?また、臨界期と関連があるか? この目的で、マウスのバレル皮質から視床-皮質線維連絡を保ったスライス標本を用いて検討した結果、以下の点が明らかになった。 1.放出確率は生後発達のどの時期においても高、低の2種が存在すること、 2,発達期に、低い方の放出確率には変化がないが、高い方は発達に応じて低下していき、臨界期をすぎるとほぼ一定となった。 3,AMPA、及びNMDA成分のpaired pulse比(PPR)を観察すると、NMDA成分のPPRはMK-801の結果と同様に臨界期に特異的に放出確率が減少していった。しかしながら、AMPA成分のPPRは、むしろ臨界期に放出確率が上昇していく傾向が見られた。 4,以前報告されたように、AMPAとNMDAのPPRの差違はサイレントシナプスの含有率を反映していることが示唆された。 以上の結果を総合すると、我々のデータは、臨界期に特異的に存在するサイレントシナプスでは、高い方の放出確率を持つシナプスが特異的に結合し、この時期では成熟動物においてよりもさらに高い放出確率を示していることが示唆された。 さらに、視床-皮質シナプスの伝達効率を上昇させると示唆されているニコチニック受容体(nACh-R)作動薬のニコチンを投与すると、生後約10日以前の幼弱動物ではシナプス前性にサイレントであったシナプスの活性化が観察された。この結果は、AMPA受容体を持つアクティブシナプスへの終末にnACh-Rが局在している可能性を示すと考えられる。
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