2004 Fiscal Year Annual Research Report
生後発達に伴う脳の再生能低下のメカニズム:新たな神経再生の試み
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16500234
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
川野 仁 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 副参事研究員 (20161341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三五 一憲 財団法人東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 主任研究員 (50291943)
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Keywords | 中枢神経系 / 損傷 / 神経再生 / ドーパミンニューロン / 繊維性瘢痕 / IV型コラーゲン / 反応性アストロサイト / コンドロイチン硫酸 |
Research Abstract |
哺乳類の中枢神経系では、損傷後の神経軸索の再生がきわめて困難であり、これが現在、脊髄損傷による後遺症で多くの人が車椅子の生活を余儀なくされる理由となっている。 本研究では、生後発達過程のマウスを用いて黒質線条体ドーパミン神経路を切断し、その後の軸索再生を詳細に観察した。成体マウスでは切断後、ドーパミン軸索の再生は起こらず、損傷部周囲には神経再生を阻害すると考えられている反応性アストロサイトやコンドロイチン硫酸プロテオグリカンが増加し、また損傷部にはIV型コラーゲンを含む繊維性瘢痕が形成されていた。一方、生後7日までの新生仔で同様の切断手術を施すと、ドーパミン線維が損傷部を越えて再生した。この場合、反応性アストロサイトやコンドロイチン硫酸は増加していたが、繊維性瘢痕は形成されなかった。経時的に切断手術を行ってみると、軸索再生が起こらなくなる時期(生後10日前後)と繊維性瘢痕が形成される時期が一致することから、繊維性瘢痕の形成が再生軸索の伸長を阻んでいると考えた。 この仮説を検証するために、軸索再生が起こらない生後14日と成体マウスで、IV型コラーゲンの重合を阻害する鉄キレート剤である2,2-dipyridyl(DPY)を術直後、切断部位に投与すると、コラーゲンの消失とともに繊維性瘢痕の形成も完全に抑制され、多数の再生ドーパミン線維が切断部位を越えて線条体まで伸長した。この結果から、損傷部に形成される繊維性瘢痕が中脳ドーパミン線維の切断後の再生を阻んでいることが結論された。この研究成果は、国際誌Journal of Neuroscience Researchに印刷中である。なお、現在、損傷後に増加する反応性アストロサイトとコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの生理的意義について、さらに研究を進めている。
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